∈ @HOUSE! ∋
⇒@第三話
第二の関門である秘密厳守について、クラウドはその後も奔走しなければならなかった。まずはこのオンボロアパートの人間を味方につけねばならない。
取り敢えずこのオンボロアパートのドンであるシドのところまで行くと、クラウドは颯爽とセフィロスの事を話し始めた。
因みにシドは、こっそり楽しみにしている連ドラを丁度見終わったところであった。
「…というわけでさ。今日からセフィロスっていう人が同居することになったから」
連ドラのエンディングからCMまでの間にせつせつと大方の内容を語っていたクラウドは、シドがテレビを消したタイミングでそう締めくくる。
クラウドは正座までしてその話を真面目にしていたものだが、一方のシドはといえば、寛ぎタイムだったこともあって寝そべりながら煎餅をボリボリやっていた。さすがはドン!こんな非常時でさえオッサン魂はバーニングである。
「へえ、そうかい。まあ俺は別に構わねえよ」
「ホント!?ありがとう、シド!」
「だけどよ…」
クラウドが喜んだのもつかの間、シドは少々表情を翳らせてそんなふうに言葉を続ける。
「どうなんだ、その…校長から押し付けられたって部分はよ。大体ダンボールに人間なんか入れる馬鹿いねえだろ」
いや、ところが実際いたんです。
クラウドはそう反論したかった。そう、したかったのだ。
だけれど普通に考えたら、確かにそんな馬鹿はいない。っていうかもう猟奇殺人しか思い浮かばない。
「お前よ、その校長ってのは脳みそ大丈夫なのか?いっぺん確認でもしたらどうだ」
「確認って…出来ないよ、そんなの。だって俺、約束破ったんだ。探ろうとするなとか言ってたくらいだから開けてもマズイだろうし、だけど開けちゃったし。そんなのバレたら怖いよ」
むしろ今度は自分がダンボール詰めになるんじゃないかと冷や冷やする。コンクリート詰めでジュノン港に沈むよりかはまだマトモに感じられるが、やっぱりどっちも嫌なものは嫌だと思う。まあ当然だけど。
「まあ、あれか。とにかくワケ有りってことだな」
仕方ねえ、などと言いながらムックリ起き上がったシドは、顎をすりすりして俄かニヤリと笑い出す。そうして、実にシドらしい言葉を放った。
「別に悪かあねえよな。何てったってウチのアパートにはワケ有りの野郎ばっか住んでんだ。今更一人増えたって何てこたないぜ」
「シド…」
その言葉に思わずほろりとしたクラウドは、先ほどまで煎餅を食べていたせいで若干油と塩がついていたシドの手をギュムッと握った。ほのかな海苔の匂ひ…きっと煎餅は海苔煎餅だったに違いない。
「後はもう、面倒なことになってもそんときゃそんときってワケだ。まあそんなイワク付きのモン預かってんだから何かしら起こるってことだけは覚悟しとくしかねえな」
「分かってるよ」
クラウドは強くうん、と頷いた。
但し心の中で「不本意だけど」と続けたが。
とはいえ、シドの言うことには当然一理あるわけで、クラウドはそれを不本意ながらも受け入れなくてはならないなという事は考えていた。別にセフィロスが後日どうなろうとこっちの知ったことではないけれど、現状で分かっている問題というのが「校長との約束を破ったこと」である。そして更に問題なのは、その約束を破ったことでどんな不都合が出てくるのかその詳細が分からないということだ。
誰にも奪われてはいけないし、誰にも壊されてもいけない。
自分で探ることもいけない。
秘密や謎だらけのあのセフィロスに関して、クラウドはおろか誰一人として、深入りしてはいけないのである。だけれどセフィロスは今クラウドやザックスと「友達」という関係になっているわけだし、深入りまではいかずとも中入りくらいにはなってしまうだろう。
セフィロスは肝心なところを知らない人だから、深入りしようにも出来ない状態とはいえる。だけれど本当は「友達」というそれすら、許されないことなのだろう。
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