∈ @HOUSE! ∋
⇒@第一話
「うわああ〜!!!」
荷物をガシッと持ったはずのクラウドは、あろうことか一瞬にして荷物の下敷きになった。
ダンボールの表面が手で滑ったのと、あんまりにも重かったことが原因である。
それはそれで仕方ないとしても、問題は荷物が傾いてしまったことだろう。これはあくまで預かり物なのだから、どんな些細なことにも注意を払わねばならないというのに早速傾いているんだからどうしようもない。っていうか重い。
「ああ〜もう!」
アパートの通路の幅が2mよりも断然狭かったことで、荷物は辛うじて傾くだけに留まっている。これが快適なアパートだったりしたら通路もやけに広くて、今頃床にバッターンとか何とかいって倒れていたところだ。危ない危ない。
「…にしても」
―――――――ここから、どうしよう?
いつまでもこの体勢のままいるわけにはいかないけれど、かといってもう一度ダンボールを持ち上げてみても結果は見えているような気がする。というか、大体一人で運べるようなシロモノじゃないと思う。
「…こんなドデカイものだなんて聞いてなかったのに」
預かりものだというから、小さなものだと思っていた。
まあそれも勝手な想像でしかないわけだけれど、普通こんなドデカイものなんか預けるほうがおかしいと思う。こんなものを預けておいて丁寧に扱えなんて有り得ない。無謀だ。策略だ。酷い!
「くそう…段々腹が立ってきた…っ」
クラウドは、自分の体勢がどうなっているかはすっかり棚に上げて、すっかりお怒りモードになった。
そもそもあの校長がいけなんじゃないかと思う。生徒に、しかも何故だか自分に、こんなものを押し付けるほうが間違っているのである。せめて預けるなら0.5m四方に収まるものにしろと言いたい。この際爆弾の方がまだマトモだと思う。…嘘だけど。
しかし、そんなふうに怒ってみたって事態は一向に変化しない。
シドを呼ぼうと思ったが、先ほどシドは出かけてくると言っていたから今はいないだろう。他の住人はどうだろうと思ったが、そういえば此処の住人は夕方には外出している人ばかりだったと思い出す。これでは全く駄目である。
「もう…」
クラウドはため息をつくと、目前のドデカイダンボールを見やった。
そして、仕方なくもう一度チャレンジしようと手に力を込める。
―――――――と、その時。
「おーす、クラウド!何やってんだ、お前?」
あんまりにも暢気な声が響いてきて、クラウドの手からは思わず力が抜けた。
その瞬間に荷物に顔面をぶつけたのは言うまでもない。
そんな哀れなクラウドの横で、先ほどの声の主はププっ、と噴出したりしている。何とも失礼な奴である。
「おいおい、そんなコントやってて面白いのか?まあ笑っちまったけど!」
「コントじゃないよ!俺は必死なんだよ!見て分かるだろ!?」
第三者的に見たら確実にコントである。
「大体なあ、ザックス!笑ってる暇があったら助けてくれよ!」
これがかの有名な逆ギレだ。
「こんな重い荷物一人持てるわけないだろ!何考えてるんだよ!全く!」
そんな事を言われても困るというのがザックスの心情であることは間違いない。大体そういうことはツルピカ頭に言えば良いのであってザックスに言うのはいかにもお門違いである。まあそれが無理だからザックスに言っているのだが。
「まあまあ、怒るなって」
ザックスはどうどう、と馬を静めるが如くにクラウドを静めると、相変わらず陽気な顔をしながらクラウドを襲っている荷物に手の伸ばした。
それから、「おっしゃ!」と気合などを入れて力を込める。
…と。
どうした事だろうか、何とあの憎きダンボールが動いたではないか!
「おお〜!すごい、ザックス!」
思わず感激したクラウドは感激ついでに、ソレ部屋の中に入れてって、とかなり都合の良い言葉を放った。しかしザックスもザックスでかなり陽気だったものだから、ああ良いぜ、なんてサクッとそれを了解してしまう。…良いコンビである。
そうしてクラウドは、ようやく荷物を部屋に入れることが出来たのだった。
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