∈「S−CLUB」∋
⇒何時かきっと会える
「彼女がそんなことをしたのは、私が原因なんです。彼女はそうしてS-CLUBやオーナーを支援しているように見えて、その実、私を元の店に戻そうとしていたんですよ。彼女はあくまで私が元いた店の顧客なんです。というか……株主なんです」
「何いいいいい!!!??」
一同、ビックリである。まさかそんな大それた人物だったとは!
「だから彼女のS-CLUBに対する支援は、私をS-CLUBから放す手段でもあったわけです。確かにS-CLUBが回るようになったら私自身も用済みだし出て行こうとは思ってたんですけどね。でも結局私は今でもS-CLUBにいる。彼女は私を元の店に戻そうとしたけれど、私に戻る気が無いと分かって、その内私を困らせようとし始めたんです」
そこにきてヴィンセントが口を挿んだ。
「しかし何故オーナーに迫ることがツォンへの嫌がらせになるのだ?」
「うむ、確かに」
その尤もな疑問に、ツォンは一瞬手にしたビールを落としそうになった。それから慌てて、いやそれは、とか何とか口ごもる。…正に挙動不審。
「だからそれは…彼女は見抜いてたんでしょう。私が仕事に対してやる気になった理由が、オーナーにあるということを。だから私からそれを奪おうというわけです。だからオーナーに迫るんですよ。本当にオーナーに惚れている部分も多少はあるのでしょうけど、大方はそれが原因なんです」
「なるほど…」
一同は納得しつつも、最後にちょっとだけ挙動不審になったツォンに疑惑の眼を向けずにはいられなかった。確かに内容は分かったが、どうやら何だかツォンとルーファウスの間には只ならぬ何かがあるらしい。
そう思ったが、取り敢えずのところ誰もそれは口にしなかった。
「そんな訳で――――――お願いがあるのです」
最後にツォンは、キッパリとこう言う。
「彼女のこと、気にかかっているとは思いますが…この件に関しては私に任せて下さい」
それはつまり、手出し無用ということである。
今さっきまでオーナーを助けようと円陣すら組むくらいの勢いだった皆にとって、このツォンの願いでは結構に大きい。それでも皆が笑顔で了承し頷いたのは、他でもなく、ツォンだってS-CLUBの仲間の一人だということを知っていたからである。
「分かった。俺達は手出ししない」
「期待していよう」
「頼むぜ、ツォンさん」
「頑張ってね!」
それぞれそんな言葉をかけると、それこそ本当に一同は円陣を組んだ。何だか変なホスト達だが、そんなところがS-CLUBのいい所である。
「―――よし!」
ココに、意見は一致した。
あくる日、しつこくもその女性が姿を現したとき、やはりルーファウスはツォンを連れて出てきていた。やっぱり二人とも顔は険しい。
けれど、その日の展開はちょっぴり違っていた。
「ねえ、ルーファウス…」
そう言ってFカップの胸をルーファウスの腕に押し付けた彼女に、ツォンは何と―――――ウイスキーをビシャッとかけたのだ!!
「きゃあああ!!何するのよ、ツォン!!」
一瞬にして店内がざわめく。ホスト連中+オーナーはビックリ仰天して口をパクパクさせたものである。しかしその中でもツォンだけは憮然として真面目な顔つきをしていた。
「出て行って貰えませんか。そしてもう二度と来ないで下さい」
「な…何言ってるの、貴方。私が誰だか分かってるの、大体私がこの店にどれだけ貢献したか――――」
「ええ、存じておりますよ?」
そう言ってツォンは、片隅に用意しておいたらしい物体を彼女の目の前にデン、と突き出した。
それは何と―――――――。
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