∈「S−CLUB」∋
⇒何時かきっと会える
バタン、と音がした。
何だ何だと一同が一斉にドアの方を見遣ると、何と驚いたことにそこにはツォンが立っていた。これは誠非常に珍しいことである。何しろ皆の中で謎に近いツォンが突然こうしてやてくるなんてコトは未だかつてそうそう無かったから。
ツォンは、突如このようにやってきた事について詫びると、突然こんな事を言い出した。
「お話したいことがあります。良いでしょうか」
そう言うので皆は、どうぞどうぞとツォンを招き入れる。思わずビールなんかを出してツォンにそれを飲ませてしまうと、ついつい自分たちも飲みたくなってしまって、結局皆でビールを煽りながら話す羽目になった。
しかし話の内容は至って真面目だったので、笑って団欒なんていうふうにはできなかったが。
「今日の女性のコトなのですが、実は全ての原因は私なのです」
「ええっ!?」
一同はビックリしてそう声を上げる。その中で、ツォンはしみじみと話を続けた。
「もう10年ほど前の話になりますが、私もある店でホストをしていたんですよ。彼女はその頃の私の顧客だったんです」
「ツォンさんの顧客??」
何とホストだったのか!そう思いながらもクラウドはそう聞き返す。
「そうです。彼女はいわゆる良い顧客で、何せ羽振りが良かったんです。でも私はその店では本当に向上心もないホストでしたから…彼女に対してもおざなりな接客だったのですね。でもS-CLUBの立ち上げに協力する為にその店を辞めてからの私は、S-CLUBの為にと思って、多分今迄で一番の仕事をしてきました。立ち上げ時、私もホストとしてS-CLUBで働いていたんですよ」
意外でしょう、そう言いながらツォンは笑う。
一同は全く遠慮もなく「本当に意外だ」とか何とか言って深く頷いたものだ。っていうか、本当に失礼である。
「彼女は私の居場所を突き止めてS-CLUBにまでやってきましたが、多分そんな私の一変した態度が許せなかったんだと思います。その当時、ルー…オーナーと私の顧客は分裂していて、何故なんだか対立していたんですよ」
それが彼女が言っていた例の「対立時代」というやつである。それは別にルーファウスとツォンが対立していたのじゃなく、それぞれの顧客が対立していたのだ。
「彼女は、オーナー側の顧客として筆頭に立ってました。私の顧客に喧嘩を売っては大騒動を起こしてね。その上彼女はS-CLUBの経営に関して、結構な額の寄付までしてきたんです。勿論オーナーにとってはそんなものは必要なかったんですが、何せ問題を起こし兼ねないお客さんですから、拒否することもできずに受け取っていたみたいで。しかも他店の客までS-CLUBに連れてきたものだから、確かに店に対して貢献しているといえばそうなんです。けれど…」
「けれど?」
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