∈「S−CLUB」∋
⇒何時かきっと会える


 S-CLUBの裏指名ナンバーワンは何を隠そうオーナーである。
 裏指名というのは他でもなく裏であるが、何で裏なんて言われるかというと、基本的に店の前にデーンと構えているホスト写真の中にオーナーのものは無いからである。
 だから、普通の客はオーナーの存在を知らない。故に指名なんかするはずがない。
 が、何を隠そうオーナーは、その昔はホストとしてS-CLUBを立ち上げた人なのである。
 だからその昔を知る人は、写真にも無いというのにオーナーを指名したりしてくるのだ。だからオーナーはそういう時だけフロア仕事をしていた。
 
 
 
「ねえ、ルーファウス」
 オーナーの顧客は、ルーファウスと名前で呼んでくる。知る人ぞ知るといった感じ。
「ルーファウスも昔みたいにフロア出てくれば良いじゃない。私、ルーファウスがいないとつまんなーい」
「馬鹿者。ウチのホストは粒ぞろいだぞ」
「ヤダ。私はルーファウスが良いもん」
「私は忙しいんだぞ、全く」
 オーナー・ルーファウスと客のやり取りというのはハッキリ言って普通じゃない。
 元々家柄が良いルーファウスは、基本的にちょっぴりエラそうな物言いが板についていて、客に対してもそれは同じだった。普通、客にそんな物言いをしたら大問題なのだが、ルーファウスの場合は昔からそうしてやってきたもんだから客もそれに慣れっこである。というか、そんなルーファウスがお気に入りなのである。
 しかしやっぱりそれは普通じゃないから、そんなルーファウスの仕事っぷりを見ているホスト連中は、大概う〜んと唸らずにはいられない。
 絶対おかしい…あんなんで良くホストをやってこれたもんだ。
 っていうかむしろ客の方がちょっと変なのか??
 そうそれぞれの心の中ではツッコミが入りまくっていたが、それにも増してツッコミたいのは、ルーファウスが口癖のように言っている「忙しい」だった。
 っていうか、アンタ普段何してんのさ!?…ツッコミどころ満載である。
 で、もっと謎なことが起こることもしばしばある。
「おい、ツォン。ちょっと酒作ってくれ。シングルストレートだそうだ」
「了解しました」
 ツォン…これはルーファウスの秘書であるが、ルーファウスはたまに自分がフロア仕事に入るとこうしてツォンも連れてくることがあった。
 しかし考えてもみて欲しい。
 ホストはサービスである。サービスというからにはその酒だってホスト自身が作るのが当然である。にも関わらずツォンに酒を作らせているとはこれいかに。
 ルーファウスと客はまるで、どっかのバーにやってきた客同士という感じなのだ。
「オーナーって普通じゃないよね…」
 クラウドが唸ってそう言うと、隣にいたセフィロスがこう言う。
「オーナーに普通を求める方が最早普通じゃない」
「なるほど!」
 オーナー、それは正に普通じゃない人だった。
 
 

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