∈「S−CLUB」∋
⇒何かちょっと幸せ
「で、お前を振った女というのはどういった女なのだ?」
「え?」
何でそんなことに食い下がるんだろうと思い、クラウドは首を傾げる。しかし、よくよく考えると…そうだ。そうなのだ。会話なんてどうやってどう続くかは分からない。きっとセフィロスはそれを試しているに違いない。
そう思ったクラウドは、一瞬驚いたその顔を元に戻し、その質問に答えた。
「うーん、と。彼女は幼馴染だったんだけど。俺はずっと昔から彼女が好きで、だけど何か勇気無くて告白もできなかったんだ。それがやっと告白したら、もう彼女には好きな人ができてたんだよ。彼女、言ってたよ。本当はずっと俺の事を好きでいてくれてたんだって。だけど俺がずっと何も言わなかったから、彼女はそれがもどかしかったみたいなんだ。もし俺がもっと早く告白する勇気を持ってたら、そんな男になんか攫われずに済んだのかもしれないけど」
クラウドが語ったそれは事実だった。事実だけれど今では別に何とも思っていない。だからそれを感傷的に口にするのはクラウドがホストとしてそれを話しているからに過ぎず、別にそれ以外の理由は無かった。
しかしそれを聞いたセフィロスの方は、迫真の演技の如くこんなことを言い出す。
「それを恥じることなどない。確かに物事はタイミングが重要だ。だが告白とは男がするものと決まっているわけではないし、その女もお前が好きだったならばそういうアクションをするべきだったのだ」
「うん、そうだね。でもやっぱり俺…」
俺がいけなかったんだと思う、そう言ったクラウドは、どこかしんみりしていた。しかしそれはあくまでホストとしてである、あくまで。
クラウドは勿論それがセフィロスに伝わっているものだと思っていたから、そうした芝居をしていることに関していつ怒られるやもしれない、なんて事を思っていたわけで、セフィロスがすっかり素に戻って話をしているだなんてちっとも気付いていなかった。
だから、セフィロスの手が伸びてきた時には本当にビックリしたものである。
「セ、セフィロス??」
修行中だということを念頭に置いていたクラウドにとって、今この場でセフィロスの名を出すことはタブーだったけど、それでもその時は驚きのあまりそんなふうに声に出してしまった。
セフィロスの手は、ガッツリとクラウドの腕を掴んでいる。その上、セフィロスときたらじっとクラウドを見ているもんだから、これはもうクラウドの方が焦ってしまう。
「不謹慎だが、その女に振られて良かったな」
「え、ええ??」
何でそうなる?ワケが分からない。
そう思うクラウドの隣でセフィロスは、少し笑ってこう言った。
「お前がもしその女のものになっていたら、多分お前は今此処にいなかった。俺はきっとお前に出会えなかったろう」
「あ…そ、うだね…」
ドキドキドキ―――――――何をいきなり言い出すんだ…!?
心臓がバクバクしている中やっとそれだけを答えたクラウドは、セフィロスが素に戻っていることをやっと理解した。とはいえ、あの会話のどの辺りからそうなったのかということには別に考えが及ばなかったから、クラウドはセフィロスの真意なんかは全然分からないままである。
ただ、そんなクラウドでもちゃんと分かるような言葉をセフィロスが口にしたもんだから、それは困った事態を引き起こす。
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