∈「S−CLUB」∋
⇒何もないけど、これだけはきっと


「俺はさあ、こういうふうに話してる時が最高なのよ。どんなに好きな奴相手だって黙ってじっと見詰めてるなんてのは何だか性に合わなくってさ。好きな奴なら笑わせてやりたいし、それで俺だって満足できる。客だって同じ。擬似とは言わないけど、好きな奴相手みたいに、そうやってお互い笑って良い時間をだな…」
「うん…」
 とろんとした目でクラウドはとりあえず頷く。自分から話すことはままならないけど、ザックスの話を聞くことはちゃんとできる。
 ザックスの話を聞きながらクラウドは、そんなザックスだったら誰もかもを笑顔にしちゃうんだろうなんて事を考えていた。
「幸せだね…」
 だから、いまいちままならない口調ながらもクラウドはそう呟く。
「ん?」
「ザックスの彼女…」
「…は??」
 クラウドの言葉に変ちくりんな顔をしたザックスは、何だそりゃ、なんて言って首を傾げる。クラウドはいまいち口調がぐだぐだだったので上手い具合に説明できなかったけれど、要は、そういうザックスの彼女という人はきっとすごく幸せなんだろうね、という事が言いたかったのだった。
 その意味が何とか伝わると、ザックスはニヤっと笑ってこう言う。
「そりゃお前…ちょっと違うぜ」
「んー…??」
 ザックスは自信の笑みを浮かべながら言った。
「言っとくけど俺、彼女なんかいないぜ。まあ仮にそういう人がいても俺は、その人だけにそうするんじゃない。例えば俺はな、今クラウドの事だってそうしたいわけだ」
「俺えー…?」
「そうそう。今は二人しかいない。だから俺はお前の笑顔だけを狙ってんの」
 そう言って笑うものだから、クラウドも思わず笑ってしまった。けど、そうした瞬間に、あ、やられたな、なんて思う。
 そうだ、ザックスが狙ってる笑顔というのはこういうことなんだろう。
 

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