∈「S−CLUB」∋
⇒何もないけど、これだけはきっと
さて、掃除は終わった。
そう思ってそろそろ退散するかなんて考えていた頃、ザックスは何かを閃いたようでクラウドの耳元にあることをコソコソと告げた。
それはちょっとした提案だったのだが、クラウドにとってはあんまりにも大それていた内容だったので、さすがに驚きを隠すことはできなかった。
それは、こんな内容である。
「オープンするまで、二人でこの店をリザーブしようぜ」
――――――――無論、これは許されない。
そんなことをしたらあのオーナーは頭から角を出して怒ることだろう。大体掃除が終わった後は喚起の為に空気入れ替えをするから、その間は誰もココを使用してはいけないという掟になっている。ただでさえ煙草の臭いが蔓延するのだから、従業員がココを使うなんていうのは許されないのだ。
しかしザックスは何だか子供みたいに楽しそうにその提案を押してきた。
だから何だかクラウドはそれを断り切れなくて、結局ザックスの提案通り、その掟を破ることになった。
無論、酒も忘れてはいけない。
店の酒を仕事以外で使うなんて到底許されない。何故ってその酒について金を支払ってくれる人がいないからだ。…こういう所は切実である。
でも、普段は商品の一部でしかないその酒を自分の好きに誂えることができるというのは何とも魅力的だった。
―――――――という訳で。
「おし、できた」
ザックスはいつもの調子でサクサクッと酒を割ると、それをひょいとクラウドの前に出してやった。それは何だか客にするのと同じような雰囲気である。
それもそのはず、この二人きりの店内では、ザックスにとってはクラウドが、クラウドにとってはザックスが、正にお客さんなのである。
だからクラウドもそんなふうにザックスに接した。但しそれはあくまでザックス流自然体を貫いた形でだったから、いつも客の前で緊張してしまうクラウドにとっては随分とリラックスできた空間だった。
「じゃあまず、乾杯」
「乾杯っ」
グイグイグイッ、とやる。
いつもは事情あってそうそう無節操に飲めるわけではないから、それに比べれば随分とイケる。その上クラウドにとっては、ザックスの割ってくれた酒があんまりにも飲み口が良かったので、それは更に加速されていったといって良い。
こんな仕事をしている割には酒に弱いクラウドは、ガブガブガブ、ガブガブガブ、と飲んでいる内に、そりゃ当然といわんばかりに酔いが回ってきた。
しかし忘れるなかれ――――――――あと数時間には仕事が待っている…!
「あ〜やばっ…オーナーに怒られるよ、ザックス〜っ」
「俺も一緒だって、一緒に怒られようぜ」
「ひど…」
ザックスはといえば何でも無いという顔をしてガブガブガブ、ガブガブガブと飲んでいる。セフィロスやヴィンセントに比べたらまだ飲まない方ではあるが、それでもクラウドよりかは遥かに飲める。
そんなふうにガブガブガブと飲みながら二人は、色んな話で盛り上がった。
まあその内容は多種多様…仕事の愚痴に始まり、仲間の話題になり、恋の話にまで発展し、最後にはザックスの一人舞台になった。何故ってクラウドは呂律が回らなくなってたからである。…無念。
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