∈「S−CLUB」∋
⇒何もないけど、これだけはきっと


 掃除なんて地味で仕方無い仕事だろうけど、こうして綺麗にしているからこそ働けるのだ。誰かがやらなきゃいけないことをこうしてやっているのだから、それは全然悪いことじゃない。むしろ良いことなんだろうと思う。
 そういう良いことを一緒にやっているザックスは、クラウドにとってとても大事な存在だった。何しろ、気心が知れている。
「でもさ、ザックス。そういうザックスだから、今俺と一緒に掃除できるんだろうね」
 クラウドはキュキュッと拭き上がったテーブルを見遣りながらそう言うと、俺は嬉しいよ、とにっこり笑った。
「それ誉めてんのか、けなしてんのか…?」
 ザックスは仕方無さそうに笑って返す。しかし表情はそうそう不満というわけでもなさそうだ。
「勿論誉めてるんだよ。俺思うけどね、ザックスはきっと普通の状態で仕事してるんだと思う。仕事の顔っていうの持たないでそうしてるんだと思う。だからいつも自然体なんだよ、きっと」
「まあ、そうかも」
「でもそれってさ、凄いことじゃない?だってさ、ザックスは自然体で色んな人を笑顔にしてんだよ?絶対、凄いよ」
「そ…かな??」
 あんまりにクラウドが褒め称えてくるものだからザックスは少し照れてしまう。思わず照れ隠しに頭をポリポリなんかする。
 実際ザックスはそういうことを考えながら仕事をしているわけではなかったが、クラウドの指摘は頷けないわけでもない。
 ザックスはナンバーを取れなくても何だかんだいって今の状況に満足できていて、ソレが何故かといえば自分のやり方にちっとも悔いる部分など無かったからである。
 例え、更新時にこうして溜息なんか吐いてしまっても、基本的に後悔なんてものはない。客である人が自分といて楽しんで幸せな気分になって帰っていくことができれば、ザックスはそれだけで何だか満足だったし、その客がもう二度とS-CLUBに来てくれなくても、たった一日話しただけでその人がちょっとでも幸せになれるのだったらそれで良いんだと思っていたから。
 そう思っていたザックスにとって、クラウドの言葉は何だか妙に核心をついているような気がした。
「ありがとな、クラウド」
 何だか不思議と幸せな気分になってきたザックスは、そう一言言うと、満面の笑みをクラウドに見せた。
 だからクラウドもちょっぴり幸せな気分になった。
 


 

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