∈「S−CLUB」∋
⇒何もないけど、これだけはきっと


 そう、S-CLUBはあまりに従業員が少ないので、いかに彼らが商品たるホストであろうとも容赦がない。だから、駄目だし組み二人は店の掃除をさせられる。そんなものは秘書のツォンがやれば良いじゃないか!と過去一度抗議したザックスだったが、そう言った瞬間にルーファウスの毛細血管が数十本キレたので、以降渋々それに従っているのだった。
 で。
「クラウド、男は顔じゃねえよな!」
「え。あ…ああ、まあ…そ、そうだよね」
 ザックスだって十分格好良いのに、そう思いながらもクラウドは頷く。
「何てったってホストに大事なのは喋りよ、喋り!なのに…なのに、だ。セフィロスやヴィンの仕事風景はどうよ!?」
「え…あの二人の??」
 そう言われれば、セフィロスやヴィンセントというのは仕事中にあまりモノを喋らない。というか喋らなくてどうして仕事になっているんだかかなり不思議だが、とにかく彼らは無口といっても過言では無かった。仕事の間に喋る言葉といえば本当に数えるくらいである。彼らの顧客がクラウドのことも指名してくれたときがあり、たまたま同じテーブルで仕事をした時があったのだが、その時だって本当にクラウドの方がたまげてしまったものだ。
 何せ、セフィロスやヴィンセントはとことん喋らないのだから。
 そのくせ客の女性はそんな二人にきゃいきゃいと騒いで楽しそうにしていた……それはクラウドにとって正に不可思議100%であったことは言うまでもない。
「確かに…あんまり喋らないよね」
 だからクラウドは、ついつい唸ってそう言った。
「だろ?ってか、あんまりどころか全然だぜ。俺らとバカ話する時は結構喋るくせに仕事となるとすぱっと無口になる。そんなんでもあの二人はナンバーワンとツーなわけよ」
 因みにザックスの仕事風景といえば、この二人とはちょっと違っている。客の女性がきゃいきゃい騒いで楽しそうにしているのは同じなのに、ザックスもその女性達ときゃいきゃい騒いで楽しそうに過ごしているからだ。
 つまりザックスは、見ていて美味しい男ではなく、一緒に騒いで楽しい男だったのである。
 この違いは凄まじく大きい。
 S-CLUBの客層がどちらかというとセフィロスやヴィンセント寄りであるからこそ、その違いはザックスにグサッとくるのである。
 どうやらココの客というのは、目の保養よろしく無口な男がお好みらしい。
「けどさあ…俺が例えば無口になったら、それっていかにも変だろ?」
「変だね」
「でも客のニーズがそれだったら、俺っていかにも駄目ってことじゃないか」
「駄目だね」
「それこそ万年床掃除って感じ」
「そうだね」
「…おい、クラウド。お前、肯定しすぎ!」
「え、そう?」
 全く冷たいよなとか何とか言いながらザックスは床をサクサク掃いていく。クラウドはそれを見てちょっと笑って、パッパッとテーブルを拭いて行く。
 もうこうして二人で掃除するのが常になっていたから、二人の掃除の息はピッタリと合う。まあそんなものが合っても嬉しいのかどうかはかなり疑問だが、クラウドとしてはこの時間も結構お気に入りだった。

 

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