∈「S−CLUB」∋
⇒何かあなたに
さて…セフィロスの趣味の家であるが、そこは相当綺麗だった。というか、無駄なものがない。家具一式はあるものの、その他のものが無いのだ。家具だってそこにあるというだけで使用されている形跡があるのはシンクとコーヒーメーカーくらいである。ここ最近こっちの家にいるセフィロスだけれど、果たしてどんな生活をしてるんだろうとクラウドは首をかしげてしまった。どうせだったら、なんでも揃っている本当の家にいるほうが楽だろうに。
「座ったらどうだ?」
「あ、うん」
勧められるままにソファに腰を下ろす。コーヒーを飲むかと問われたので、うん、と返す。セフィロスは例のコーヒーメーカーでコポコポとやり始めると、で、なんて言いながらクラウドの隣に腰を下ろした。
「話というのは?」
「えー…っと」
「まさかお前…店を辞めたいとかそういう話ではあるまいな?」
「え。違うよ!」
ビックリしてそう言うと、セフィロスは「何だ」なんて言ってホッとした顔をする。しかしクラウドはホッとしてなんかいられなかった。何しろ例の話題を振らねばならないのだ。
ちょっとしてコーヒーが出来上がり、セフィロスはそれをクラウドに差し出しながら、改めてこう聞く。
「で、話は何なんだ?」
「うん…えっと」
切り出しにくい…そう思うけど、この家を訪ねてきたときと同じようにクラウドは意を決して、その話題をとうとう口にすることにした。
「あのさ。最近セフィロス、元気ないよね?」
「は?」
「いや、何かさ…仕事中もうわの空でしょ?絶対おかしいなって。図々しいかもしれないけど、何かあったなら話を聞きたいなあなんて…思って、それで」
「…なるほど」
そんな話か、とか言いながらセフィロスはコーヒーを啜る。その様子は何だか別に普通といった感じで、本当は何も無いのかな、なんて思わせるくらいのものだったが、しかしやはり問題はあったらしい。
コーヒーカップを目前のテーブルに置いたセフィロスは、一呼吸おいた後にこんなことを切り出した。
「お前、口は堅いか?」
「えっ。あ、うん。固いよ、大丈夫だよ!」
クラウドは焦ってそう言ったものだが、内心ビックリしていた。口が堅いかと聞くからには、その内容は他にバラされてはいけない秘密事なのだろう。そういう秘密事を打ち明けてくれそうだというのもビックリである。
クラウドが口を結んで秘密を聞く体勢を整えると、セフィロスもまた、前かがみになって秘密を打ち明ける体勢を整えた。
「実は――――――ある誘いが、あってな」
「誘い?」
「そうだ。ある有名店から、誘いを受けている」
「えええええっ!!!???」
何と、セフィロスは勧誘されているらしい。
それはクラウドにとってビックリ以外の何者でもなかった。
もし今セフィロスがS-CLUBからいなくなってしまったら、この店はどうなることだろう。というかあのオーナーは絶対許さないだろうし、仮にセフィロスがその店にいってしまったらライフル片手に乗り込みそうな気がする。いや、気がするっていうか絶対そうするだろうけど。
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