∈「S−CLUB」∋
⇒何処かでずっと待ってるから


「とにかくアレじゃねえ。こんなん気味悪イじゃん。機種変してきた方が良いって」
「え…でもザックス。この携帯、今日買ったばっかなんだよ。買ったその日に機種変なんて出来ないよ。また新規になっちゃうよ」
「仕方ねえだろ。だってこのまま持ってても気味悪いだけだぜ?」
「でも…」
 こんな奇妙な出来事の前に現実を引き出すのも難だが、クラウドとしては出たばかりの新機種代はかなり痛い出費だった。それを今回涙を飲んで買ったというのに、同じ日に二度も払うなんて胃が痛くて仕方無い。
「仕様が無い。クラウド、そうしろ」
 ルーファウスは簡潔にザックスの意見を後押しすると、じゃあそれで解決だな、なんて人事のように言う。いや、それは本当に人事だった。
 しかし当人であるクラウドにとっては、このままこの携帯を持っているのも、新しく買い換えるのも、どっちも冗談ではないといった具合である。しかし出費を堪えてこれを持ち歩くとなるとかなり恐いことになる。だって一人きりの部屋で、またピロロロなんて鳴った日には恐ろしくてトイレにも行けない。本当に。
「どど、どどどうしよう…」
 クラウドは多いにどもって冷や汗をダラダラさせる。選択肢は今二つあるが、そのどちらも嫌な感じである。
「クラウド。この際、携帯を持たないというのはどうだ?どうせ私達の間だったらすぐに連絡は付くだろうし、他は公衆電話を使えば良い。何だったら店の電話を使わせてもらえば良いじゃないか」
 そこにヴィンセントが新しい選択肢をくれたので、クラウドは少しそれによろめいた。そう、そうなのだ。いっそ携帯なんて携帯しなけりゃ良いわけだ。
「そ、そうだね。それも良いかも」
 クラウドは弱気ながらもその意見を飲み込もうとした。が、そこで鶴の一声。
「それは都合が悪い。出先などでどうしても連絡したいときはどうするんだ。特にクラウドなんかは用を頼むことが多いんだからな」
「オーナー…それ、用を頼むっていうか、使いっ走りじゃ…」
「ああ、そうだ」
「……」
 常々クラウドに色んな用事を言いつけていたルーファウスは、クラウドに連絡がつかないのは嫌だなどと言い出す。オーナー、それはオーナーの我侭です、とは誰もツッコめない。
 しかしそう言うからには、やはり携帯は必要ということになってしまうわけで、これはクラウドにとっては大問題だった。
「じゃあやっぱり新規で買い替えってこと…かな」
 弱気でそう言うクラウドに、良い事を言った人がいた。それはセフィロスである。セフィロスはさすがにナンバーワンで数年努めている実績があるから、ルーファウスに対しても結構な口がきける。というわけで、こんなふうにルーファウスを言いくるめた。
「オーナー。そう言うならクラウドに携帯を買ってやってくれ。クラウドは今月苦しいそうだからな」
「うっ…」
 今月苦しい、という言葉に思わずクラウドが呻く。実のところ毎月です、とは口が裂けても言えない。
 しかしルーファウスの方はそんなセフィロスの言葉に何ともないような顔をしてこんなふうに答えた。

 

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