∈「S−CLUB」∋
⇒何処かでずっと待ってるから


 「ねえ、見てみて!」
 息を切らせた笑顔のクラウドは、そう叫ぶや否や、ジャジャ〜ンという効果音つきである物体を皆の前にかざした。
 それは―――――――…。
「何だ、携帯か」
 別段何でもなさそうにセフィロスがそう呟く。しかしクラウドはあくまで興奮して笑顔でこう言った。
「そうそう!見てよ、セフィロス。これ最新機種だよ!昨日出たばっかの!本当は予約待ちだったんだけど、裏ルートで手に入ったんだ〜」
「何だそんなに興奮して。そんなのは珍しくも何ともないぞ」
 やはり冷静にそう言ったセフィロスは、懐からある物体を取り出す。
 そう―――――それは。
「…あ。」
「どうだ、参ったか」
 そう、それはクラウドが興奮気味で語っていた最新機種そのものだった。つまりセフィロスはもう既にそれをゲットしていたわけである。しかし昨日発売のものを今日既に持っているというからにはその素早さは並ではない。さすがはセフィロス。
 クラウドは折角興奮していたというのにそれですっかり眼が覚めてしまった。少しくらい自慢したかったのに、自慢した相手を羨ましいと思ってしまうなんてアホである。
「ちぇー…俺、一番乗りだと思ったのに」
「ふふ。まあそうしょげるな。ザクなんかに言ったら面白い反応が返るぞ」
「ザックス?何で?」
「何でって、アイツの携帯なんか未だに重量のモノクロだからな」
「え。そうなの??」
 セフィロスの言う通り、ザックスの所持している携帯電話は未だにモノクロだった。しかも初期のものだったから重さなんかはかなりあって、しかも使い勝手も昨今のものとは比べ物にならないほどである。
 ザックスが何故今でもそれを使用しているかというと、それはひとえに、興味がなかったからであった。何がって、そういう最新のものに、である。
 実のところそれは、ヴィンセントもセフィロスも同じことだったが、彼らの場合何といってもナンバーワンとナンバーツーなわけで、関連会社に勤める客が黙っていないわけである。だから貢物の一つにそれがあるといった具合で、彼らの携帯電話は常に最近のピカピカであった。
「で、その携帯ってのは使い勝手が良い訳か?」
「うん。俺、ずっと新しいの欲しかったんだ。ほら、前のは何だかもう色も剥げてきちゃったから。それにイタズラメールも多かったから新規にしたんだ。丁度良かったよ」
「なるほど」
 少しばかり興奮が戻ってきたクラウドは、セフィロスの前であれよこれよという具合に携帯電話を弄り出した。此処をこうするとこんなのもできるんだよ、なんて、聞かれてもないのに勝手に説明なんかしたりする。セフィロスはそれを黙って聞いていた。何だかそんなことに夢中になるクラウドがちょっと面白い気がしたから。
 しかし、そのまったりした幸せ空間は、次の瞬間にピキンと凍りついた。
 そう――――――――――それは…。
 ピピピピピピ……
「あれ?"メール着信中"…??」
 おかしいな、そんなふうに呟きながら携帯のディスプレイ画面を眺めるクラウド。確かにそれは首を傾げざるをえないほどおかしな出来事だった。
 そう、考えてもみたまへ。
 クラウドの携帯電話は今日、最新のものになったのだ。しかも新規で契約したもんだから、メールアドレスだってまだ設定してやしない。すぐに設定したって開通するまで時間がかかるはずだからこれも変である。よって、メールが来るはずがない。ってか受信するなんてありえない。送信するなんてありえない。

 

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