∈「S−CLUB」∋
⇒何でも言ってくださいね
「しかし不思議なものですね。あの時、もう終わったのだとばかり思っていたのに」
ツォンはふとそんな事を呟いて、人生何があるか分かりませんね、なんて言う。
その言葉にルーファウスは、
「実際終わったんだろう。あの時の私はナンバーワンじゃないヤツなんか欲しくなかったからな」
と、キッパリ言った。だもんだからツォンは思わず苦笑してしまう。
ナンバーワンじゃなかったのに今ココにいるのは誰のせいですか、と心の中で毒づきながら。
――――――――確かにあの時、本当は終わったのだろう。
だけど終わったと思ったその後、奇跡的な再会によって、また始まってしまったのだ。
多分、たったそれだけのことなのだ。
数ヶ月の時を経ての再会…それはあまりにも偶然。
顧客から聞いた店の事を思い出したツォンが、試しにと思ってその店を覗きに行ったことがあったのだが、実はそれこそが再会の場だったのだ。その店とはS-CLUBではない。そうではなくて、もう老舗の人気店である。
今迄あまり興味が無かったのに何故その時だけ覗きにいったのかはわからないが、何故だかツォンはそこに出向き、そしてその場でルーファウスと再会をするはめになった。何故ってルーファウスはまたその店で勧誘をしていたからである。
何だ…あの男はまだ勧誘をしているのか。
ツォンはそう思って思わず笑ってしまったものだが、勧誘するルーファウスがあまりにも必至だったため、ついついその姿に話しかけてしまったのだ。きっとどんなに勧誘しても駄目に決まってる、そう思ったから。
ルーファウスはそれでも尚勧誘をし続けていたが、やがてツォンの忠告を聞くうちにそんな事が無くなっていった。しかしそれと同時にどういう訳かツォンに相談するようになっていたのである、店というものについての諸々を。
そうして何だかワケの分からないウチに友達のような関係になったツォンは、やがてS-CLUBを立ち上げる際にも重要な役割を担うはめになってしまったのだ。しかしその頃にはもう馬鹿馬鹿しいと反論する気にもならなくて、むしろ必至になっているルーファウスを見て協力したいとまで思うようになっていた。
店の顧客はツォンを目当てに来てくれはするけれど、ツォンの目的にはならなかった。
だけどルーファウスは違う。
ルーファウスは事も無げにツォンを頼ってきたし、重要視してくれた。だからそれはいつしかツォンに目的をもたらしたのである。
この人の夢を、手助けしてあげよう――――――と。
だから当初はツォンもS-CLUBで働いていた。オーナーであるルーファウスも自ら働いた。そうして頑張っているウチに何人かの人材を得ることに成功し、店も徐々に上り調子となっていったわけだが、そうなってしまったらツォンは最早目的を果たしたも同然だった。
だからツォンは、店がそこそこやっていける状態までになったとき、ルーファウスに告げたのである。
もう私は必要ないでしょう、と。
しかしルーファウスはそんなツォンを引き止めた。勿論ツォンがいなくとももう既に店は回る状態だったし、これといって問題はない。しかしそれでも、引き止めたのである。
その理由がこれだった。
→next
⇒S-CLUBトップ
⇒メニューに戻る
⇒INDEXに戻る
|