∈「S−CLUB」∋
⇒何もできないからせめてこれだけ


「あのね、クラウド。私が今日何でクラウドを指名したか分かる?どうしてセフィロスやヴィンセントじゃなかったのかって、分かる?」
「え…いや」
 確かにそれは分からなかった。けれどエアリスはいつも、セフィロスやヴィンセントを差し置いてザックスを指名しているんだから、彼ら二人は指名の対象ではないんだろうということは分かる。
「あのね、それはね。あの二人を指名したら多分、ホストとホステスになっちゃうんだよ。そういう雰囲気が出ちゃうんだと思う。でもザクとは友達みたいにオシャベリできるでしょ?クラウドもまだホストが板についてないから、私は私としてクラウドとオシャベリできるんだ」
「…エアリス」
 じーん…何だか妙に感動してしまっているクラウドの隣でエアリスがフフフ、と笑う。
 エアリスは笑っているけど、クラウドは何だかとてもじゃないけど笑えなかった。
 きっとエアリスも仕事の顔を持っているんだと思ったから。
「だから私はね、ザクっていうお友達とオシャベリするためにS-CLUBに来るの」
「そっか…」
「でもね、何か私、クラウドの事も気に入っちゃったな」
「そっか…――――――――ええっ!!?」
 10秒後にビックリしたクラウドは、慌てふためいて目を見開く。
 気に入っただなんて、めちゃくちゃ恐れ多い。だって何しろエアリスは超有名店のホステスさんなのだ。そのホステスさんが新米ホストのクラウドを気に入っただなんてあんまりにも恐れ多い。
 しかもエアリスといえばザックスの顧客である。確かヴィンセント辺りが、ザックスの売り上げの半分はエアリスだとかそんなことを言っていたけど、もしそれが本当だとしたら別の意味でもこれは大問題である。
「あわわわ、お、俺なんて駄目駄目だよ!?お、俺なんて…っ」
 何だかワケが分からないままホストにあるまじき謙遜をし始めたクラウドは、エアリスの手をそっと払う。だけどエアリスはそんなのお構いなしで、もう一度クラウドの手をギュッと握ると、
「だーめっ。もう気に入っちゃったもん」
 そう言って手を握るどころかクラウドに抱きついた。
「ぎゃああああ!!」
 本来嬉しいことなのに色んなことがグルグルしていたクラウドは、そんなふうに叫び出す。


 

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