∈「S−CLUB」∋
⇒何もできないからせめてこれだけ
さて、そんな皆の疑問の的エアリスだったが、彼女はある日何を思ったんだかとんでもない事をしでかした。
不幸も不幸、その日彼女のお目当てホストであるザックスは、腹痛の為に欠勤をしていたのである。原因は食あたりらしいが、これは名誉の為に客には伏せられた。
まあそれはともかくとして、折角来たのにザックスがいない〜!という事になったエアリスは、そこでサクッと帰るということをせず、事もあろうに他のホストを指名した。因みにこれは天地がひっくり返るほど珍しいことである。過去やっぱりザックスが欠勤した時があったが、その時の彼女は至って淡白だった。
「ザックスがいないんだったら別に良いかな。じゃあね〜」
…俺達じゃ不満ってか!?そうセフィロスとヴィンセントは思ったものだったが、何せあのエアリスである。無口な二人とは相当ジャンルが違うので、まあ指名されなくても良いか、と二人は思っていた。
が、しかし。
ある日エアリスは、とんでもないことにこんな事をしでかしたのである。
「ザックスいないのかあ…残念。―――――じゃあ…クラウド、指名しちゃお」
その言葉に、ホスト連中+オーナーはピキッと固まった。
何ですと?今、誰を指名すると言いました?
そう皆が心中疑問を浮かべている中、指名されたクラウドはザザーッと蒼褪めていた。
ただでさえ緊張しっ放しのクラウドがエアリスに指名なんかされたらそりゃもう大変である。果たしてちゃんと喋れるのかどうかも危ぶまれる。
それは、正に恐れていた事態だったが、何と言うことかセフィロスもヴィンセントも「それは無理だ」とか「やめておけ、まだ新米なんだし」とかそういう優しい言葉はかけてくれなかった。良く言うアレである。可愛い子には旅をさせろ、と。
まあその旅がちょっぴり大旅になってしまったというくらいの話で。
そんな訳でクラウドとエアリスの二人のテーブルが出来上がったわけだが、これはやっぱり一種異様だった。何せ…。
「クラウド、何飲む?」
「え。あ、はい。俺はその。いや、ええと…」
会話になってない、これ一つ。
「はーい、あ〜ん…」
「あ。え、いや、それは。あ…あーん…」
客のペースにはまるホスト、まず有り得ない。
「クラウド、お仕事大変でしょ?悩みがあったらいつでも私に言ってね」
「あ、は、はい!すみません、何だか気を遣わせちゃって…」
どっちが客だ、どっちが!?
――――――こんな調子だから、観衆(に成り果てていたホスト連中+オーナー)はハラハラドキドキしっ放しだった。オーナーなんかは涙が溢れんばかりである。まさか自分の店のホストたるものが客に慰められているだなんて…というか酒まで作ってもらって、あーん、とか何とかまでしちゃってからに、これでは全くもって逆転ではないか。
→next
⇒S-CLUBトップ
⇒メニューに戻る
⇒INDEXに戻る
|