∈「S−CLUB」∋
⇒何もできないからせめてこれだけ


 S-CLUBは穴場ホストクラブである。
 で、ホストクラブというのは深夜営業であるから、やっぱり深夜を楽しむ人がやってくる。その深夜を楽しむ人というのはまあ様々だが、例えばこんな人もやってきたりするわけで。
 そう―――――――例えば…超有名店の、ホステスさん。
 
 
 
「ザク〜!今日も来ちゃったっ」
 そう言ってニコニコ笑顔で声を上げているのは、ザックスの顧客である。
 でもこの顧客、そんじょそこらの顧客とはワケが違う。何せ飲む量が違う、払う額が違う。…まあそれでもやっていけるのは、彼女がひとえに超有名店のナンバーワンホステスだからであろう。
 彼女がいつものようにザックスを指名し、ザックスのテーブルに入ると、大体他のホスト連中はこぞって首を傾げたものである。
 ナンバーさえ持っていないザックスに何故あのような顧客が??
 ――――――確かにコレは摩訶不思議。
 新米ホストのクラウドなんかは当初その事実にビックリして思わず口の中からバーボンを噴出したものだが、それも数回続くと何だか慣れてしまった。だからクラウドはもう驚かない。
 しかし、やっぱり疑問ではあった。
「おかしい…絶対おかしい。何故エアリスはいつもザクを指名するんだ?」
 すっかり慣れたとはいえ、未だに首を捻るセフィロス。
「確かにそうだな。あいつの売り上げの半分はエアリスだろうしな」
 ヴィンセントも首を捻っている。
「ホステスさんってザックスみたいな人が好みなのかな??」
 思わず首を捻ってクラウドもそう言ったものだが、そのクラウドの言葉には二人から反論があった。それが何かといえばコレである。
「バカ、俺の顧客にもホステスの女がいるんだぞ」
「私もだ。風俗嬢なんかもいるしな」
「えええええっ!?風俗嬢!!?」
 全然別のところにビックリしたクラウドは、そうか、そうなんだ、なんて納得しながらもザックスを見遣る。
 ザックスは超有名店のナンバーワンホステスであるエアリス相手でも、ちっとも変わった様子なくいつも通りに楽しく喋ったりしていた。何だかクラウドにとってはそっちの方が凄いと思ってしまう。多分自分だったら緊張してしまってどうしようもないだろう。っていうか、いつも緊張してるけど。
 と、そんなクラウドの心をサックリと見透かしたセフィロスが一言。
「ふ…お前、エアリスに指名なんかされたらパニックだろう?」
「えっ!…何で分かったの…?」
 そこですかさずヴィンセントの一言が。
「というか、クラウドの場合いつも緊張しているではないか」
「うっ…!」
 ナイスツッコミありがとう。
 どうやらクラウドの緊張癖はすっかり皆にバレているらしく、これはオーナーも知るところだった。だから月一のミーティングでもすっかり「緊張するな!緊張するくらいなら飲め!」と説教される具合で、その度クラウドは落ち込みつつも、良し、やってやるぞ!と大酒を煽るのだった。因みにオチは、飲みすぎで二日酔いに決まりである。
 

 

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