∈「S−CLUB」∋
⇒何時でもどこでも君が欲しい
「どうせだったらあの時、やっとけば良かったなあ」
「――――――はい?」
何を言っとるんですかこの人は?そう思いながらセフィロスがポカンとしていると、何と言うことかルーファウスは手にしていたグラスを持ち上げて、それをカラカラとやりだした。しかもその顔は目が据わっている上にニヤけている。…恐い。
「これ、何の酒でしょう〜??」
「え?何の酒ってそれは―――――――あ。」
そう、そのルーファウスの飲んでいた酒は、あの頃アンが好きだったウイスキーの銘柄そのものだった。目前の15皿に息が止まりそうだったセフィロスはそんなことは全く気づいていなかったのである。
―――――――…ザ・嫌な予感。
「七年目の今になって重要な告白をしようか、セフィロス?お前が恋したアンという女…実はアレは、ニセモノだ」
「な…何!?」
「しかもアレ、変装した私だ」
「何イイイイイイイイイ!!!!!!!!??????」
ガショーン、と皿とフォークとナイフを落としたセフィロスは、クラウドのように周囲に「すみません」の謝罪攻撃などするはずもなく、呆然とルーファウスを見ていた。
そりゃそうだろう、だってあのアンが実はルーファウスだったなんて、笑い話にもならない。っていうか気がふれて笑いたくなるような気はするが。
ルーファウスは驚きのあまりムンクの叫びになっているセフィロスをケタケタ笑いながら見遣ると、
「良い芝居だったろ?」
などと言った。
そんなことを言ったものだから、セフィロスは一気に怒りが頭に上ってしまう。だってあれほど本気で色々な言葉を口にし、此処まで忘れられない思い出になっていたそれを、良い芝居だなんて酷すぎる。あんまりだ。
「貴様…!」
セフィロスは我を忘れて、オーナーたるルーファウスの胸倉を掴んだ。その怒りは鎮まりそうもない。
がしかし、ルーファウスは突然のように冷静になると、じっとセフィロスを見詰めてこう言った。
「私は、いつでもどこでもお前が欲しいと思っていたんだ」
「な――――」
何を訳の分からないことを、そう言うセフィロスにルーファウスは同じ口調のまま続ける。
「あの芝居を何故打ったか?それは最初、お前に近付くためだった。お前という人間に興味を持ったからだ。でも――――――お前があんなふうに真面目に言うから」
そこまで言ってやっと硬い表情を崩したルーファウスは、ふっと柔らかい笑みを見せて、実はお前に惚れてたんだ、などと問題発言をした。
「お前を初めて見つけたとき、興味が沸いた。どういう人間なのか、ってな。何だか悶々とお前のことばかり考えてしまうようになったから、私は一つ芝居を打ったんだ。自分の気持ちがどういうものなのかと思ってな」
「……」
「結果、私は気付いたんだ。私は私個人としてお前を欲しいと思うよりも、オーナーとしてホストであるお前を見ていたいんだ、ってな。…というより、お前が普段見せないそういう優しさは多分、占有してはいけない気がしたんだ」
「……」
「―――――――だから、諦めた」
まあそれはちょっとした気の迷いだったんだろうけどな、そう言って笑うルーファウスに、セフィロスは掴んでいた胸倉からすっと手を離す。
あんまりにも一度に色んな告白をされたものだから、何だか頭が混乱気味である。
しかし分かったのは、アンが架空の人間であるということ。
そしてオーナーは過去、自分に恋愛感情的なものを抱いていたということ。
それらをもう一度整理してからセフィロスは、ルーファウスにこんなことを聞いた。
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