∈「S−CLUB」∋
⇒何時でもどこでも君が欲しい
さてその食事だが、大体そこは豪華なレストランだった。さすがはオーナー、その注文っぷりも並ではない。
テーブルの上には約15皿の料理が並んでいるが、この細身の身体のどこにこんだけの食料が入るんだとセフィロスは不思議で仕方なかった。
が。
「ささ、ドーンと食べてくれ!」
「な…もしや俺にこれを全て食えと?」
まさかそんなバカなことがあるか!?
「ああ、当然」
「……」
―――――――あるらしい…。
というわけでセフィロスは目前の15皿を睨みつけ、その中でも腹に溜まりそうもないものから片付けていくことにした。所謂、前菜の種である。
さすが高級レストランの一品だけあって味は良い。がしかし、これだけの量を食べるとなるとかなりキツイのは言うまでもなく、セフィロスは心中ブツブツと文句を言っていた。
因みに隣のオーナーはガブガブと酒を流し込んでいる。っていうか単にお前が飲みたいだけじゃないのか!?そうセフィロスが思わずにいられなかったのは言うまでもない。
その鬼のような食事が中盤に差し掛かり、セフィロスの腹具合が幾分かヤバくなりかけ、更にオーナーの眼が座ってきた頃、ふとこのような会話が始まった。
「なあセフィロス。お前の顧客で昔……アンとかいう女がいたのを覚えているか?」
そう言われて、セフィロスは思わず手を止める。
アン―――――――確かにそんな顧客がいた。
しかもその客のことは良く覚えている。確かどこかのバーで働いているとか言っていた、これまた夜の住人である。そのアンは、綺麗な黒髪をしていて、ちょっぴり釣り目の大きな瞳を持っていた。仕事柄なのかハッキリした口調をする女性で、その人はあまりにもセフィロスにとって印象的だった。
何故って―――――問題を起こしそうになった唯一の客だったからだ。
「ああ…覚えてる」
「あの時は冷や冷やしたぞ。お前が昼夜問わずボーッとしていたからな。…アンは確かに魅力的な女だった」
「ああ…そうだな」
「ふうん、認めるか?」
「ああ、まあな」
セフィロスはそんな返答をしつつも、アンとの過去を思い出していた。
それはもう何年も前の話で、セフィロスがS-CLUBに入ったばかりの頃の事であった。
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