∈心のナイフ∋
泣きたいのに泣けない気持ち

 
「死んだら一生忘れられないって言うだろ?そんなふうに自分を誇示するのは馬鹿らしいと思うけど、一つの方法ではあるなって思う」
 
「俺がそれを試すとしたら、愛してほしいからじゃない。憎いからだ」
 
「おれが死んだら、それはヴィンセントのせいだから」
 
ある日クラウドは私をある場所に呼び出した。
 
私はその日用事が入っており、あらかじめクラウドとの待ち合わせには間に合わないと知っていた。そしてその事実はクラウドもまた知っていたのだ。
だから私は予定通り用事をこなしてからその場に向かったのだが、辿り着いた先にいたのはクラウドではなかった。
 
暖かい、屍だった。
 
断たれたばかりの命が訴えていたのは、もし私が時間通り此処に来ていたらクラウドは生きていただろうということである。しかし私は用事を済ませ此処に来た、それが間に合わなかった理由だ。
 
 愛されたいからじゃない。憎いからだ。
 
ふとよぎったクラウドの言葉が、妙に鋭く胸をついた。
愛されたいから忘れられない思い出になるのではなく、憎いから忘れられない思い出になる、そういうことだ。
 
私は、クラウドの思惑とおりそれを受け取る。私は、クラウドの思惑通り憎まれ、そして、忘れられなくなる。そうして、こうして、墓地にくるようになった。毎日毎日休むこともなく、すべての思考を彼に費やしながら。それはクラウドが望んだことだったから。
 
…私を憎むために。

  

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