∈心のナイフ∋
嫌なのに断れない気持ち

嫌なこと?
 
そんなの、この世には腐るほど存在しているだろう。その嫌なことをいちいち数え上げていたらキリがない。けれど、中にはどうしても拭えない「嫌なこと」も存在している。
 
なあ、知ってる?
 
強がることはすごく簡単なことなんだ。だって、それは偽者だから。強がりなやつってさ、強い偽者の自分を見せていないと耐えられないような弱っちい人間なんだぜ。本当はスゴク弱いから、だから強がるんだよ。
 
俺は強がりだったから、あの時、物分りの良いヤツになろうとしてた。バカな俺。本当はすごくすごく嫌だったのに、俺はそれでもカッコつけて快諾した。
 
”コンビ解消だな”
 
ショックだった。
 
まさかルードの口からアンナ言葉が出てくるなんて。絶対にそんなことないって、俺は心のどこかで信じてたから、その言葉が出てきたとき、本当に脳天をかち割られたくらいにショックだったんだ。
 
嫌だ。
そんなの嫌だ。
 
それが俺の本心だった。
 
もしあのとき、俺がダダこねて嫌だって言ったら、お前は苦笑いして、仕方ないヤツだな、なんて言って、今でも相棒でいてくれたのか?
 
俺には分からない。
 
俺はどうすればよかったのか。本当ならどうするのが正しかったのか。俺は今でもそれを考えてるんだ。隣に誰もいなくなった、寂しい一人きりの席で。
 
 
 
 
誰かにすがり付いたり、何かにべったり執着するのなんて、何だかカッコ悪いって思ってたあの頃の俺は、来るもの拒まず、去るもの追わず、がポリシーだった。
 
それは、本心とは裏腹にルードのときにも適用されてた。
 
俺の元を去るなら勝手にどうぞ、って。俺は追わないから、って。そんな斜め45度の偉そうな態度がそのままそこに出てた。きっとルードは、俺を見て呆れただろう。でもほら、俺は強がりだから。
 
引き止めて欲しいとか、俺が相手を必要とするよりも相手が俺を必要としなきゃダメだとか、そんなバカバカしいことを思ってたんだ。
 
馬鹿馬鹿しい?
 
いや、違う。馬鹿馬鹿しくなんてない。こういう強がりな人間を、笑うヤツとかバカにするヤツとかいるだろうけど、強がりは強がりなりに頑張ってんだ。頑張ってるから強がるんだ。強がりの装備を外したら、まるでチキンな旅人だし。そんなんじゃ戦闘なんて出来っこない。世界は、周りは、いつだって強敵ばっかりなのに。
 
そんな強がり装備の俺の隣で、ルードはいつもすまして戦ってたっけ。思えばアレだ、相乗効果だったのかも。隣にいるだけで強くなる相性ってあるだろう?アンナ感じ。

  

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