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欲しい。そう思って手を伸ばす。
それでも手を伸ばした先に確かな感触などなく、ただひたすらに手を伸ばし続けるだけ。
そんなふうに生きてきた。そんなふうに生きてきたから、分からない。
求めて、求めて、そうしてやがてそれを得るということがどういう事なのか。
仕方ない、求めて得られたものなど、今の今まで一度も無かったのだから。
大方の人間は、俺を英雄と呼んだ。
膨大な力を欲しいままにした、闘神の申し子とでもいうように、俺をそう呼ぶ。
俺はその事に特に嫌気がさしていたわけではなかったが、そのように呼ぶことに関してただ一点の誤解があることだけは常に訴えかけたいと願っていた。
しかし、俺は未だにそれに成功したためしがない。
何故なら、どれほど俺がそれを訴えたところで、それは霞のように消えうせてしまうからだ。
強い。
デキる。
頼りになる。
どれも褒め言葉としては申し分ないが、俺にとってそれらは不要な飾り物に過ぎない。
俺は今までそれらの装飾で彩られた事実に対し自ら望んだことも欲したこともなく、仮にそれをやろうと言われても欲しいだなんて思わなかったろうと思う。
不要な、いつの間にかやってきた、付属品。装飾物。
「セフィロス、大好きだよ」
クラウドは俺に向けてよくその言葉を放った。それは悪くは無い、恐らくクラウドにしてみれば心のこもった最大の言葉なのだろう。
もしその言葉を受けるのが俺ではないとすれば、その言葉は正に祝福されたものになったはずなのに、対象が俺であるというそれだけで霞がかったように薄れてしまう。
俺はクラウドを嫌いではない。
好きだと思う。
しかし俺には、クラウドの言うそれらの言葉や、その言葉に裏づけされたクラウドの気持ちに眠る一縷の羨望がどうしても好きにはなれなかった。
「強くて良いなあ」
強さとは何を意味する?
「誰だって憧れる」
憧れは本物になれない。
「俺にはできないよ」
俺にだって出来ないことはある。
「ねえ大好きだよ」
誰が?
英雄が?
それとも…。
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