∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒そして眠りの海へ


「…んー?」
 そんな優雅なルーファウスの時間は、数分後にすっと終わりを見せた。
 双眼鏡に映るルーファウスは、突然読書を止めると何やらすっと立ち上がり、何故か服を着替え始めたのである。
「着替え…!」
 嗚呼、これぞ覗きの根本――――――!!!
 …と浮かれたのも束の間で、ルーファウスの着替えなどサクッと終わりを告げてしまった。
「ちっ。上半身だけかよ」
 何を望んでるんだ、何を。
「んーでも何処に出かけるつもりなんだかな…」
 そうそう、問題はそこである。着替えたということは勿論どこかに行くという意味だろうが、レノにはさっぱり分からない。けれども、いつもだったら「何時の間にかどっかに行っている」という状況が、今日ならばハッキリと分かるのだ。だって今こうして見ているのだから。
 そんな訳でレノは、いつもルーファウスが自分を無視してまで何をしているのかという事を探るべく、そのお出かけについていくことにした。もし此処で誰かとアツアツなことになっていたりなんかしたら、そりゃもう絶対許せないからである。こちとら魚とクラゲと戯れているというのに。
「よし」
 レノは双眼鏡を置くと、早速ルーファウスの行動を尾けることにした。
 
 
 
 ルーファウスを尾行したレノは、トロピカルなコスタ・デル・ソルの海岸に辿り着いた。どうやらルーファウスは誰かと待ち合わせをしているらしく、何だかソワソワとしている。その様子を木陰から見守っていたレノは、ルーファウスがソワソワするなんて尋常じゃなかったから、いよいよ愚痴が膨らんでいった。
 きっと誰かと浮気してるんだ。じゃなかったらあんなにソワソワしないだろ。
 そう思って顔こそ険しくなっていたレノは、やがてルーファウスの元にやってきた中年男を発見すると、もう許せんと言わんばかりにルーファウスの前に駆け出した。
 いちゃいちゃできなくとも恋人は恋人である。
 あんな中年男が自分の恋人とあんな事やこんな事など絶対に許せない…!
「おい、ソコ!!ふざけんなよ、っと!!」
 叫びながらルーファウスの前に登場したレノは、華麗にサクッと中年男に殴りかかると、正にこてんぱんにソイツをやっつけた。中年男は「あ〜!」とか何とか言ってジタバタしていて、ちっとも手ごたえがない。まあレノの楽勝というとこである。
「俺の恋人を捕まえてシツレイな事してんなよ!」
「あう〜違います、違うんですよ〜」
「何が違うんだよ?お前、服脱ごうとしてただろ。最悪!」
 レノがそう指摘しながら中年男をゲシゲシとやっていると、隣でぽかんとしていたルーファウスがやっと声を上げた。
「レノ、やめろ。ソイツは本当に何でもない」
「はあ?でもコイツ、マジに服脱ごうとしてたし…」
 レノが言うのは嘘ではない、確かに中年男はルーファウスの前で服を脱ごうとしていたのである。
 がしかし、それはどうやらレノの大きな勘違いであったらしい。それが証拠にルーファウスがサクッとこんな事を言う。
「それはな、私が頼んだんだ。海に落し物をしたから、探して欲しいって」
「――――は?」
 何だそりゃ?
「捜索用の船が壊れてて、どうしても誰かに潜ってもらわないといけなくて…。彼はそういうのを専門にしている業者なんだ」
「……」
 ザ・勘違い。
 要するに中年男は単なる業者で、浮気でも何でもなかったのである。それなのにレノはソイツがこてんぱんにしてしまったから、中年男はもう既にその仕事をすることすらできないという始末。正に最悪の事態である。

 

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