∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒あなただけ感じてる


 未だかつてこんなに気持ちよかったことがあるだろうか。否、無い。
 エステ慣れしまくっているルーファウスをそこまで唸らせたのは、キング・オブ・エステティシャンではなく新人だった。
 彼の名は、セフィロス。
 ミッドガルの大手企業の24時間戦える企業戦士、通称リーマンだったセフィロスは、あんまりにも会社がつまらないものだからこの際もっと楽しい仕事をしようと思い、辞表を出したその日にたまたま電信柱に貼ってあったメンズエステの広告に目を留めたのである。
 なるほど世の中にはこんな仕事もあるものかと感心し取り敢えず電話してみたところ、その日の内に内定が決まってしまい、それどころか「明日から出社ね」とトントン拍子に進んでしまったという塩梅。そんなんだから、勿論ノウハウなんてまだもまだである。というより、休憩は何分だとかスマイルは0円だとかトイレの水量は何リットルだとか、そんな説明を受けている段階なのだ。
 そんな彼が、分かりもしないままにルーファウスの体に触れたその日。
 それは、ルーファウスにとっても、セフィロスにとっても、大きな日になった。
「ふむふむ、どうやらお前には相当センスがあるみたいだ。私はお前が気に入ったぞ。よし、早速お前を売り込もう」
 エステで人材を売り込むというのも妙な話だが、ルーファウスは商売には目がなかったので、これはイケる!と思ったその瞬間にそれを決定した。さすがは世界のルーファウス、さすがは我らがルーファウス。何とも早業である。
 そんなわけで、何時の間にやらこのメンズエステは、まったくド素人のセフィロスを看板とするエステになってしまったのだった。
 
 
 
 さて、このエステ、恐ろしいことにぐんぐんと売り上げを伸ばしていったものである。その間、セフィロスは一応基礎的なことをマスターしてはいたのだが、さすがにかのキングほどの技術を習得することはできなかった。がしかし、それでもセフィロスは、キングを抜かして看板の座を背負っていたのである。
 因みにこのエステでは、指名制を取っているため、気に入ったエステティシャンを選ぶことができるのだが、その指名もセフィロスはダントツトップだった。
「なんかあの人に頼むとヤベ〜よな、朦朧としてくるもんな〜でも気持ち良いしさ〜」
「同感同感〜」
 世の中のイケメンを目指すメンズはそんなことを口にしながら店を去っていく。どうやらセフィロスに対する感想らしいが、ルーファウスはそういう部分も聞き逃さなかった。そして、ニヤリ、と頭の中でソロバンを弾く。ちょっと古い。
「よし…イケるな」
 そんなルーファウスの企みを受け、翌月には女性向けエステの1号店が出来上がった。今までのメンズエステはキングに任せるとして、セフィロスは女性向けエステの方へと転向になったのである。
 このエステ、ルーファウスの狙い通り物凄い大ヒットとなった。
 女性相手に若い男性スタッフがエステを行うというところがまず第一の狙いだったわけだが、それにも増して物凄かったのはセフィロスの人気である。そう、セフィロスはどっかの雑誌モデルかなんかのように、いわばブレイクしてしまったのだ。カリスマ美容師ならぬカリスマエステティシャンである。まあテクニックはそんなにないけど。
「もうセフィロス様に見られてると思うと興奮しちゃって〜」
「ホント〜!もう明日も予約入れちゃった〜」
 ここはホストクラブか?、そうツッこみたい。
 ダントツ人気のセフィロスに続き、若干イケメンなスタッフまで同じ穴のムジ…いや、同じ嬉しい悲鳴に包まれることとなる。そのおかげで売り上げはウハウハ、合言葉は勿論「ガンガンいこうぜ!」だ。ドラクエだ。
「よしよし、良いぞ。これで事業も安泰だな」
 そんな素晴らしい状況にルーファウスは上機嫌で、毎日にこにこにこにこ笑っていたもんである。そりゃあ商売うなぎ登りとくりゃ誰だってヨダレも垂れるだろう。
がしかし、そんなルーファウスにも、一つだけ盲点があったのだ。それはほんの些細な盲点だけれど、ルーファウスにとっては重大な盲点だった。
 
 

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