∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒もうちょっと落ち着いて
「お?…ああ、こりゃ失礼!今日は彼女サン連れでしたか!」
「カノジョ???」
「いや〜可愛らしい方ですね。どうですか、ご一緒に一杯クイッと!」
「クイッと、って…おいおい、この方はそうじゃ…」
彼女でもないし、そもそも女性じゃないぞ、とツッコミたかったツォンだが、ツワモノ御曹司は何故かニコニコして「良いなあ、クイッと!」なんて言っちゃっている。どうやらルーファウスの中で女性に間違われている所や彼女と間違えられている所などてんで関係ないらしい。しかもさっきツォンが「可愛いは誉め言葉」なんて言ったものだから、すっかり誉められていると思っているようだ。
「よし、ツォン!クイッといこう、クイッと!」
「何言ってるんですか!貴方はまだ…」
そう反論するツォンに拍車をかける旦那。頭部に気迫が感じられる。
「そーですよ!クイッといきましょうや!」
「いや、だから!そうじゃなくって!」
最早ダブルパンチだ。
「よーし!クイッといくぞ〜!」
「いや〜結構結構!ささ、どうぞご案内しますよ。狭い店ですがね、大根なんかそりゃもう天下一品ですぜ」
「何、天下一品!ツォンはそんな事一言も教えてくれなかったぞ」
「そりゃいけませんなあ!またまた彼女を見せたくないもんだからって、憎いね〜ツォンさん、ヒュ〜ヒュ〜」
――――――――――誰か助けてくれええええええええ!!!!
そんなツォンの叫びなど誰にも届くはずはなかった。
そんな訳でツォンは、楽しみだったその一杯飲み屋に何故だかルーファウスと共に行く羽目になった。当然、美味い大根もルーファウスと一緒にしゃくっとやる羽目になる。
まあ食べる・飲むに関しては別にもう良いやという気分になっていたが、問題は相変わらず勘違いしている旦那と相変わらず勘違いさせっ放しのルーファウスだった。
一杯飲み屋オススメの地酒なんかをサクッと一気飲みしたルーファウスは、もう既にテンションが高すぎてついていけない。その上何故かやたらとくっ付いてくる。それがまた旦那の誤解を助長していたのは言うまでもなく。
「折角ですから、あーんってやって貰ったら良いじゃないですか、ツォンさん!」
そう言った旦那に誘導されて、既にデロデロなルーファウスが大根をブスッと差した箸を持ってニコニコ笑っている。俗に言う「はい、あーん」「あーん」とか言うやつだ。これは大体あつあつなカップルにのみ見られる現象である。
嗚呼!何なのであろうか、このテンション!?
もう涙を流さんばかりの勢いでそう思ったツォンは、旦那とルーファウスがしつこいもんだから仕方なく「あーん」した。ルーファウスは事の次第が分かってるんだか分かってないんだか妙にニコニコしている。最早、脱サラならぬ脱御曹司だ。
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