∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒もうちょっと落ち着いて
一杯飲み屋でクイッとやって大根をしゃくっとやる事が出来なくなったツォンは、溜息混じりに夜の街をぶらぶらすることになった。しかも隣には御曹司である。
時折女性がルーファウスを見て「あの子可愛いね」なんて言って通り過ぎていくのがちょっとだけ微笑ましかったが、当のルーファウスの方はそれにお怒りだった。可愛いとは何だ失礼な、だとか言っている。
「可愛いは誉め言葉ですよ」
そう言うと、ルーファウスは訳のわからん事を聞いてきた。
「ふうん。じゃあお前はどうだ、私の事を可愛いと思ってるのか?」
「ぶっ!」
「おい、噴出すなんて失敬だな。一体どっちなんだ?」
本気でそう聞いているらしいルーファウスに、何と答えたら良いものやら…まあそこも無難にスルーさせたツォンは、ともかくこの状況を一早く終わらせようと思考を巡らせた。しかしどうだ、学生から遠ざかって久しいツォンには昨今の学生の楽しみ方というのがあんまり分からない。その上ルーファウスは普通とはちょっと違っているから、それが分かったとしても適用されないに違いないのだ。
更に悪いことには…。
「へっへっへっ。お兄さん、いかがですか?良い娘いますよ〜」
「おい、ツォン。良い娘がいるって」
―――――――違ああああああううう!!!!!
サクッと勧誘に乗っているルーファウスをバリッと引き剥がしたツォンは、こーいうのはいけません!と良い社会人を装った。ルーファウスは、どんな女かな、とか、そんなに良いのかな、とかしきりに興味津々な言葉を口にしていたがそんなの知ったこっちゃない。
ともかく健全なアフター5を教えねば!
俄かツォンの中にはそんな責任感が燃え上がった。っていうかアフター5自体健全の領域なのかどうか問いたい所だがこの際それはジュノン港にでも沈めておく。ドラムカン詰めで。
そんな訳でツォンは、カラオケはどうですかとか、食事でもどうですかとか、もうこの際一緒にプリクラ撮りますか最近の機械すごいみたいですよ、とかもう何でも良いから健全そうなものを勧めたが、ルーファウスは一向にうんとは言わなかった。
それどころか。
「そんなの詰んない。もっと渋いヤツを教えてくれ」
「渋いヤツ!?」
ツォンの脳裏に俄かショットバーとビリヤードが浮かんだ。
しかしそんなもんを教えるのもどうかを思う。まあ飲めないこともないだろうがルーファウスは未成年なのだ。健全たる社会人'Sアフター5を教えるに当たって酒などいかんと思ったツォンは、ブルブルと頭を振る。
しかしその時、偶然にもツォンを呼ぶ声があった。
「あ!ツォンさんじゃないですか!今日も別格の大根が入りましたよ〜駄目ですって、ちゃんと来てくれなきゃ!」
「あ、これはこれは…」
それはどうやら、ツォン行きつけの一杯飲み屋の旦那だった。
旦那は食材を手一杯に持ってニコニコ笑っている。頭部はちょっとテカっている。あんまり関係ない。
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