∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒したいから、させて


 ミッドガル周辺でストライフデリバリーサービスという宅配業を営んでいたクラウドには、心密かに企んでいる事があった。
 それは、宅配ピザ屋と人妻との間に良く起こる(?)例のやりとりである。
 宅配ピザ屋はピザを運んできただけでは飽き足らず、昼間の奥さんにズズズイッと詰め寄り勝手にドアの鍵なんかをかけてしまうのだ。これ必定。
 奥さん、良いじゃないですか。駄目よ駄目。へっへっへっ。嫌よ、帰って。嫌よ嫌よも好きの内って言うじゃないっすか。私には夫が…―――以下略。
 残念ながらピザではないけど宅配業を営んでいるわけなんだから、こんな事が一つや二つ起こっても良さげなんじゃなかろうかと思っているクラウドだったけれど、悲しいかな全くもって起こる気配がない。
 それどころかクラウドの身に起こるのは悲劇ばっかりだった。
「お荷物を届けにあがりましたー!」
「おめえおせーんだよ!さっさとしろよ!」
 …きゅうりパックをしたままの人妻に怒鳴られてみたり、
「すみません、ストライフデリバリーサー…」
「き〜すみ〜ぐっばい〜さ〜よなら〜」
 …突然歌われてみたり、
「宅配なんですけど!」
「だから今この家には誰もいないって言ってるでしょ。しつこいねアンタも」
 …明らかに分かる居留守を使われたりした。
 そんな具合だったから、クラウドはこの宅配業にちょっぴりうんざりしているのだった。ロマンスも何もあったもんじゃないと。
 ところがどっこい、とうとうそんなクラウドにも奇跡が起こったのである。
 それは、クラウドが長らく夢見ていた宅配ピザ&人妻シチュエーションの奇跡だった。
 
 
 
 カーム通販サービスとかいう通販で健康グッズを注文したクラウドは、それが届く日を心待ちにしていた。因みに注文したのはダンベルとウォーキングマシンである。これを使って筋肉隆々になれば、人妻も目をハートにするんではなかろうかというのが密かな狙いだったのは言うまでもない。
 まあそんなことはともかく、それが家に届く予定の日、クラウドは自宅待機していなくてはいけなかった。何でかというと、代金引換だったからである。この代金引換とかいうやつは、荷物を運んできた業者に金を渡すというやつだから、どうしてもクラウドは家にいなくてはならなかったのだ。
 午後三時になって、ピンポーン、という音が鳴る。
 来た来た!、そう思ってルンルンでドアを開けたクラウドは、そこにおっきなダンボールを持った業者の姿を見た。
「どうもー。お荷物届けに上がりました、っと」
「ありがとう、待ってたんだ」
「えーっと。じゃあ代金は20000ギルだぞ、っと」
「分かった。ええと…」
 クラウドは用意しておいた20000ギルをいそいそと業者に差し出す。それはきっちり20000ギルで、業者もそれを確認して「OK」などと頷いた。
 がしかし、何故だかそれだけでは終わらなかったのである。
 赤髪のひょろりとしたその業者は、ダンボールをごっそりクラウドに渡し金だって受け取ったにもかかわらず、何でなんだかその場を離れなかった。何だろうと思ってクラウドが聞いてみると、代金引換には手数料がいるらしい。どうやら20000ギルの中には引き換えの手数料が含まれていないらしいのだ。
 

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