∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒気持ちが溢れそうなの


「あ、そういえば!」
 TVを見ていたザックスは、CMになった途端にある事を思い出してスクッと立ち上がった。一体なんだろうとクラウドが首を傾げると、どうやら管理人さんに用があるらしく外に出なくてはならないらしい。
「今朝家賃払った時に忘れ物しちゃってさ、預かってもらってたんだ。で、それ取りにいかないといけないんだ」
「え…それって、今じゃなきゃ駄目なの?」
 今じゃないと駄目だとしたら勿論俺も付いていくぞと心の中で絶叫しつつ、クラウドはそんな事を聞く。するとザックスは、今夜取りに来いって言われたんだ、などとちょっと痛い言葉を放った。
「別にすぐそこだしさ、5分以内には帰ってくるから大丈夫だよな?」
「え。それってもしや…俺を置いていこうとしてない…?」
 クラウドが青ざめながらそう言うと、ザックスはやっぱりあっけらかんとしてこう言った。あろうことか、うん、とか頷きながら。
「だってすぐそこだぜ?家に誰かいてくれた方が助かるし、わざわざ鍵かけるのも難だしさ。まあ大丈夫だって!此処は俺んちなんだから迎えなんて来ないって」
「そんな酷いよ!すごく他人事じゃん!」
「だって、あんなの単なる噂話だぜ?実際連れてかれた奴なんて聞いたことないし」
「そんな事言ったって…!!」
 クラウドは何とかザックスを引きとめようと頑張ったが、イマドキ糸電話を使うようなザックスにはそれは通用しなかったらしい。大丈夫大丈夫とさも簡単に口にしたザックスは、結局クラウドを置いて管理人さんの元へと向かっていってしまった。
 急いで後をつけようか、そうも思ったが、それだと部屋が空きっぱなしになってしまうからマズイ。しかしかといってこのままザックスの帰りを待つのも怖くて仕方ない。
 もし…もし万が一ザックスが管理人さんと話しこんでしまったらどうする?
 で、今つけているTVがいきなり砂嵐か何かになって変な映像でも映ったら!?
「ひいい〜!!!!」
 クラウドはTVの音量を上げると、部屋の隅に積まれていた毛布をガバッと手にとってバサリと身に纏った。そうしてすっぽりと包まってしっかりと目を瞑る。
「ザックス…早く帰ってきてよー…」
 ビクビクしながらザックスの帰りを待つこと5分―――――――ザックスは予定とおりには帰ってこなかった…。
 もう5分と5秒も過ぎてるじゃないか!
 ザックスの嘘つき!
 そう思ったが、怒鳴ろうにも顔を出すことがまず怖い。口を開くのも怖い。TVの音がちゃんと鳴っていることだけが心をホッとさせたが、それでも静かなCMになってしまうとどこか心細さが増す。
「早く…早く…」
 クラウドはそんなふうにブツブツと念仏のように唱え始めた。もうTVの音なんか当てにするもんか、自分の声を当てにしよう。そう思ってますますブツブツと呟き、それだけが耳に入ってくるようになる。
 そんなふうにして更に5分経った後のこと、ふと、玄関口で音が鳴った。
 その音があんまりにも明瞭だったから、クラウドは思わずその念仏をやめてドアを方向を見やったものである。
 きっとザックスが帰ってきたんだな、そう思った。
 がしかし…どうだろう、よくよく考えたらザックスはこの家の主なんだしクラウドが此処にいることを知っているのだからコンコンなんてノックするはずがないんじゃないだろうか?
 
 

→next


LOVEx2 TIMEトップ
メニューに戻る
INDEXに戻る