∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒気持ちが溢れそうなの
「クラウド、電話が来てるぞ」
「……」
クラウドはため息を吐きながらそれ(紙コップ)を受け取ると、仕方なさそうに、そりゃもうとてつもなく仕方なさそうに紙コップを耳に当てた。
ザックスが「プルルルル」と口で言い、クラウドが「ガチャ」と口で言う。どうやらこれで電話は繋がったらしい。実に原始的である。
『クラウド、俺だ』
『はいはい。一体何?』
『あのな、実はそんな話、ちょっと聞いたことあるなって思ったんだよ。知らない奴からいきなり告白メールが送られてくるって話』
「ええっ!?」
驚いたクラウドは思わず糸電話を外してそう叫んだものだが、ザックスがジロリと睨んでくるもんだから仕方なく糸電話を再度装着した。
で、通話再開。
『ほら、良くある怪談話だよ。何でもそのメールをまた違う奴に送らないとヤバイ事になるんだってさ』
『うそお!?』
『メールを途中で中断させたり返信したりすると、夜中に自宅まで迎えに来るんだって…付き合ってくれるんでしょう?とか何とか言って!!!』
『ぎゃあああ!!!』
「うわっ、叫ぶなよ!!」
律儀に糸電話の中で叫んだクラウドの声は、糸を伝って100%ザックスの耳に届いた。あんまり本気で叫んだもんだからうっかり鼓膜が破れるところだったのは言うまでも無い。危ない危ない。
で、そんな話をされたクラウドとしては気が気じゃなかった。
だってクラウドはあのメールに返信してしまったのだ、しちゃいかんメールに誰ですかとまで書いて返信しちゃったのである。これはどう考えても危険だろう。
「ど、どどどどどうしよう!?俺、俺、迎えに来られちゃうよ!!」
クラウドがそう言うと、ザックスはあっけらかんとしてこう答えた。
「じゃあ今日は俺んち泊まるか?独りじゃなきゃ安心だろ?」
「ほ、ほんとに?」
ザックスがそう言ってくれたことで、クラウドはちょっとだけホッとする。きっと独りじゃなきゃ安心だろう。
そう思いクラウドは、お言葉に甘えて今日はザックスの家に泊まることにした。
その夜、クラウドはとにかくソワソワソワソワとして落ち着きが無かった。
だって、いつ迎えに来るか分かったもんじゃない。ザックスがスカ〜っと眠ってしまった後にコンコンなんてドアを叩いてやってくるかもしれないし、クラウドがトイレに入っている隙にトイレの小さな窓からフフフとか言って覗いてくるかもしれない。
―――――――怖い!あんまりにも怖い!!
「ザ、ザックス。トイレ行くときには言ってよ。俺も一緒に行くから!」
「おいおい、女の子じゃないんだし自宅で連れションは無いだろ」
ザックスが言うことは尤もだった。が、そんな事を気にしている暇はない。
「だって!その隙に迎えが来るかもしれないじゃん!怖いよ!嫌だよ!俺がトイレ行くときもちゃんと付いてきてよ!それから今日はシャワー一緒に浴びるから!」
「マジかよ!」
ザックスの自宅はそんなの広くは無い。一応六畳はあったがいわゆる六畳一間である。トイレとシャワールームはこじんまりしたのが付いてはいたが、勿論それはお一人様設計に違いない。イコール、かなり狭いところで密着二人シャワーである。…男二人で。
クラウドがあんまりに怖がっているものだから、ザックスは取り敢えずそれらの案に了承した。トイレとシャワーは一緒に、というやつである。
これでクラウドも一安心だったが―――――――…しかし。
時にアクシデントというのは起こるものである。
しかも、こんな夜に限って。
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