∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒溶けそう…
「ルーファウス様、私は少し休みます。明日には仕事に行けるようにしなくてはならないですから」
「そうか、そうだな。それが良い」
ツォンはよろよろとしながらベットルームに行くと、どさりとベットの上に倒れこんだ。ルーファウスと暫し話をしていたら、どうも熱が上がってしまったらしい。
まだ日中だというのにベットに潜るというのも妙な感じだが、それにも増してどうかと思うのは気温30℃の中でハムスターの如く毛布にくるんと包まるという事である。暑いったらありゃしない。
だけれど、熱を冷ます為にも我慢しなければ。
早く治して仕事に復帰して取引を成功させなければ。
一介のサラリーマンはそんなことを思いながら地獄的な暑さの毛布に包まり目を閉じる。しかしただでさえ暑い上に発熱で暑く毛布に包まって暑いとくりゃあ誰だって死にそうになるだろう。こういう時せめて悪寒があると結構嬉しいかもと思ってしまうのは何故だろう。
「ううっ…」
ツォンは殺人的な暑さの中、唸りを上げた。
暑い、暑い、暑い…
眠れない、眠らなくちゃ、でも眠れない…
――――――――嗚呼!夏よ!嘩を売っているのか!?
毛布に包まって一分後、もう既に頭が沸騰し始めていたツォンは、心の底から夏を呪うことになった。夏がなければ風邪など一切ひかないツォンにとって、この季節だけは天敵である。夏さえなければこんなことにはならないし、夏さえなければ幸せでいられる。
だけど夏は毎年容赦なくやってきてうだるような暑さでもってツォンを攻撃し、その上風邪まで吹っかけてきてはせせら笑うのだ。まるで悪魔だ。鬼だ。
風邪さえ引かなければルーファウスのヘンテコな言葉にだってさほど打撃を受けずに済むのに、こんな時だから余計に打撃を受ける気がする。
「ああ…」
ツォンは弱った心の中で、ちょっぴりとこんな事を思った。
きっとルーファウスは自分を駄目人間だと思っているんだろう、と。
夏風邪なんかひいて、ただでさえ馬鹿にされているところを大までつけて馬鹿だと言われる。まあそれは良いのだが、問題は大馬鹿といわれた先だろう。
そんな事が毎年起こったら、ルーファウスはその内「ほんとコイツは馬鹿だ」とか何とか言って呆れてしまうのではないだろうか。そもそもルーファウスは社長令息なのだから、非常に羨ましい環境で生きてきたのである。果たしてそんな彼がどこまでこんな平々凡々な生活についてきてくれるのだろうか。
ルーファウスなんかは今迄栄養士つきで栄養管理をされてお抱えドクターから定期的に検診を受けて風邪の季節には早々に予防接種を受けて一切の病気をしてこなかったのだ。それどころかホクロのレーザー消去だとかボディケアなんかは当然とまで言っていた。
それに引き換えツォンは、夏になると毎年風邪をひき、面倒だからといって町医者にさえ殆ど行かずにドラッグストアで市販の薬を飲むくらいしかした事がない。栄養成分なんか知ったこっちゃないし、忙しくて食べる暇なんかあるか!という時もしばしばあったほどだ。
そういうギャップのある二人が付き合って、あろうことか基準はツォンの方にリセットされたのだから、これは大きな問題だろう。まあルーファウスは何も文句を言わないから何とも思っていないのかもしれないけれど、いつか言われるのではないかとツォンはひっそりと思っていたわけで。
―――――――――嗚呼、夏…夏さえ無ければ…
ツォンはそう思いながら、額に玉のような汗を幾つか浮かばせる。
暑くて暑くて仕方ない。眠るどころか脳が沸騰して思考がぐちゃぐちゃである。
…と、その時。
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