∈「LOVEx2 TIME」∋
⇒溶けそう…


 夏―――――――。
 それはかくも恐ろしい溶けそうな季節である。
 セミがミーンミーンとか言うしアイスは溶けるしゴキブリはカサカサするし、そりゃもう極悪な季節に違いない。
 ツォンはそれを、溶けそうな季節と呼んでいた。
 彼は最近、クソ生意気…じゃなくて、小悪魔…じゃなくて、まあちょっとばかし生意気でちょっとばかし悪魔な恋人が出来たのだが、その恋人はこの溶けそうな季節を大層嫌っているらしく、事あるごとくにアンチ夏!と叫んでいたものである。それどころかこの前などはワラ人形の腹に夏と書いて五寸釘を指していた。一体どっから持ってきたんだそれはとツッコみたい。
 まあそれはともかくとして、そんな恋人と共にいるツォンは、やはり夏というのがあんまり得意ではなかった。
 それは何故かといえば…。
 
 
 
「おい、知ってるか。夏風邪って馬鹿がひくんだぞ。故にお前は大馬鹿だ」
「大まで付けなくても…」
「バーカバーカ!」
「……」
 ―――――夏、それはツォンにとって風邪の季節だった…。
 春夏秋冬、殆ど健康体のツォンは、何故だかこの季節になると風邪をひく。最早恒例になっていて夏が来るたびに嫌〜な気持ちになるのは言うまでもない。
 しかも今年は、前々から知り合いだったルーファウスが恋人にアップグレードしたもんだから更に酷い。昔っからルーファウスはツォンを馬鹿にするのが得意なのだ、これを馬鹿にしないわけがない。
「お前のような奴は既に恒温動物ではなく変温動物だ。両生類だ。皮がツルツルしてるんだろう?」
「訳わからんことを言わんで下さいっ」
「何を言ってるんだ、私の恋人がカメレオンか人間かは酷く重要じゃないか」
「どっからどう見ても人間でしょうがっ」
 風邪で熱があるというのに、ルーファウスは容赦ない。
 平生からちょっとオカシイとは思っていたが、やはりどうもオカシイらしく、時折こうして訳のわからん事を大真面目な顔をして言い出したりする。それに対して極真面目に答えるのもどうかと思って最近では常にこんな有様だったが、それにしても発熱時はちょっと勘弁してもらいたい。
 そもそも、そうだ。
 夏がいかんのだ。
 夏が暑いからいかんのだし、その上クールビズだとか何だとか言ってちょっとばかりクールに薄着になるとうっかり室内の極悪冷房にやられて大体はこういうオチになるのだ。冷房は悪くない、夏が悪いのだ。そう考えるとアンチ夏のルーファウスにはちょびっと共感しないでもない。
 
 

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