∈ @HOUSE! ∋
⇒@第四話


「クラウド」
「え…あっ!ご、ごめん!何か止まっちゃってた!」
 
 何やってるんだ、俺!
 そう思って慌てて掃除再開しようとしたクラウドに、セフィロスから第二声が発せられる。
 
「ダンボールに入っていた物はどうする?これも取っておくのか?」
「え?」
 
 そう聞かれて、クラウドはその物体に目をやった。ダンボールの中に残っていた物体というやつに、だ。
 見てみるとそれは、セフィロスと一緒に入っていたリモコンのような物体だった。そういえばそんなものが入っていたことをすっかりと忘れていた。
 
「ああ…これか」
 
 クラウドはそのリモコンのような物体を手に取ると、それをまじまじと見遣る。そのリモコンはいくつかのボタンが付いているものの説明が無くてどういうふうに使うものか良く分からない。
 
 しかし――――――…一つだけ確かなことがある。
 
 それは、「POWER」というボタンを押したら、セフィロスが目を覚ましたということである。そう、まるでそれはテレビのリモコンみたいに、POWERを押したらセフィロスというチャンネルが始まったかのように。
 
「……これって…」
 
 もしかしたら、とても危険なものだったりするのかも。
 何となくそんなことを思ったクラウドは、ふと「POWER」ボタンに目をやる。これを押してセフィロスが目を覚ましたということは、もしかしてもしかすると、また「POWER」を押したらセフィロスは―――――…。
 
「どうした、クラウド?」
「いや…何でも無いんだけど…」
 
 リモコンのような物体には、「POWER」ボタンの他にもグルグルと回る回転式のボタンがついている。幾つかのポイントに印がついており、恐らくそのポイントでカチッと止まるタイプのボタンということだろう。
 
「シドのところで預かってもらうなら持っていく。それとも要らないのか?」
「ごめん、これ俺にも良く分からなくて。すごく大事なもののような気がするんだけど、使い方もよく分からないっていうか…」
「使い方が分からないなら、押してみれば良い」
「えっ!」
 
 セフィロスはそう淡々と述べ、クラウドを困らせたりする。
 でももしこのボタンのどれかを押してセフィロスがおかしなことになってしまったら…そう考えるととても怖い。
 
 どうしようか。
 こんな時ザックスがいてくれたら相談できるのに。
 いや、ここにはセフィロスがいるじゃないか。
 でもセフィロスに相談をするなんて出来るだろうか?
 
 もしすごく大事なものだったら保管しておくのが一番である。でもそれをシドに預けて良いものかどうかわからない。そう考えると取り敢えずは自分が持っておくのが良いだろうと思う。
 
「じゃあ…これは部屋に置いておいて。俺が保管するよ」
 
 クラウドは結局そう決断すると、部屋の隅のデスクの上に置いておくようにセフィロスに伝えた。セフィロスはそれを了解しリモコンのようなその物体を机の上に置いたが…、
 ――――――――が、しかし。
 
 カチッ
 
 クラウドは、背後から聞こえてきた不審な音にビクッとした。
 
「"カチッ"…?」
 
 それはもしやスイッチの音では…?
 一瞬止まってしまったものの、その後すぐにハッとしてセフィロスの姿を見遣る。すると、セフィロスは机に向かって突っ立っていた。
 クラウドの方からは背中しか見えないから良く状況が飲み込めなかったが、近づいてみるとどうやらセフィロスはリモコン様の物体を見つめてぼうっとしているようである。
 しかもそのリモコンのような物体は―――――――――…。
 
「うわあああああ!ボタンがああああ!!!」
 
 嗚呼、やっぱり!
 ボタンが押されているじゃあないか!!
 
 幸い「POWER」ボタンじゃなかったようだが、グルグル回転式のボタンが、先ほどとは違う位置で止まっている。
 
「ど、どどどどどうしよう!?セフィロス、ねえ、セフィロス!しっかりして!!」
 
 クラウドは慌ててセフィロスの両腕を掴むと、それをぶんぶんと大きく揺らした。こんなにぼうっとしているなんて尋常じゃない。いくらいつも無表情だからって、これはいつもとは違う。
 
「セフィロス!セフィロス!」
 
 セフィロスがおかしくなってしまったらどうしよう!
 焦ってどうしようもない。気が気じゃない。
 
「セフィロス!ねえ、セフィロスってば!!」
 
 クラウドは最早泣きたい気分になってきた。ただでさえセフィロスは校長からの預かり物だし、折角友達になったというのにこんなことになってしまったんじゃ辛くて仕方ない。
 
 どうしよう!
 どうしよう!
 ――――――――――――どうしよう…!!
 
 …と、その時。
 
「おい、喚くな。煩いだろう」
 
「…え?」
 
 ふっと響いてきた声に、クラウドははっとする。
 見ると、そこにはハッキリとした表情のセフィロスがいて、それは先ほどまでのぼうっとした表情とは打って変わったものだった。どうやらセフィロスはおかしくなってしまったわけではなかったらしい。
 それに気付いてホッとしたクラウドは、ああ、良かったあ、と満面の笑顔になった。
 …が、しかし。
 
「何だその態度は、馴れ馴れしい。早く離れろ」
「え…え、え?」
「大体何だこの狭苦しい部屋は。窮屈だ。さっさと片せ」
「え、ええええ!?」
 
 はて、これは一体どうしたことか?
 打って変わったこの態度、先ほどまでのセフィロスとはまるで違う。しかもその横柄な言葉そのままに態度もでかい。それが証拠にセフィロスは早速というように窓際にどかりと座り込むと、方ひざを上げながら髪をかきあげてすっかりくつろぎ始めた。掃除はどうした掃除は!と言いたい。
 しかしセフィロスは。
 
「クラウド、今日からお前は俺の奴隷だ。しっかり動け」
「はあああ!?」
 
 何だよそれは!?
 ワケが分からない!!
 そう叫びたい心持でいっぱいのクラウドの目前では、悠然と微笑むセフィロスの姿があった。
 それは、平穏な日々に訪れた悲劇だったかもしれない。
 

つづく


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