∈「S−CLUB」∋
⇒何かちょっと幸せ
「ちょっと待ったあああ!!」
そんな声が、二人の耳を劈いた。
ビックリして顔を上げた二人の目に映ったのは、オーナー…―――――では無かった。
そうヴィンセントとザックスである。
クラウドは二人にこの状況を見られたことに恥ずかしくなって、思わずセフィロスの身体にしがみついた。しかしそのリアクション、セフィロスにとってはニヤリと笑みを漏らさずにはいられないものだったのは言うまでもない。
しかしそれを発見した二人の方はそんなことには驚きもせず、ただただ文句を口にした。
「何だよセフィロス。ずりーよ、マジ!」
「全くだ!この私を差し置いてクラウドを手篭めにしようだなど…」
「ほんっと!その役は俺だっての」
「ザク、それは違う。その役は私であって然るべきだ」
何だかさっぱりワケのわからない方向へいってる会話に、セフィロスはただ一言こう漏らす。
「待っているだけでは始まらんぞ、二人とも。悪いがクラウドは、俺が貰う」
その宣言に、一番蒼白になったのはクラウドである。
貰うって貰うって貰うって――――――――――!!?
クラウドはすっかりパニック状態に陥ってどうにもこうにもいかない状況になっていたが、S-CLUBの素敵なホスト軍団は、そのセフィロスの宣言を皮切りに闘志を燃やすこととなった。
「よーし!やってやろうじゃん!」
そう言ったザックスにセフィロスが一言。
「俺を負かすにはまず、ホストとして俺を抜かすことだな」
「おお、良いぜ。じゃあ今月の指名率+売上で勝負だ」
「良かろう。私も今月は負ける気がしないな」
そんな事で闘志を燃やす先輩ホスト軍団に、クラウドがついていけなかったのは言うまでもなく…。
「え、ちょ…俺まだ何も言ってな…」
クラウドの意見は完全無視され、三人は高らかに宣言するのであった。
「今月も俺が勝つ」
「今月は俺が貰うぜ!」
「今月は私のものだ」
――――――――――――クラウドの貞操や、いかに…!?
そんな具合で繰り広げられた闘争は、その月のS-CLUBの売上を格段に上げた。
クラウドの売上はそれほど上下しなかったが、それでも店全体の売上が上がったことでルーファウスは上機嫌である。だから勿論クラウドもお咎めナシ。
しかしあの修行は一体なんだったんだろう…クラウドはそう思う他無かった。
あの修行のお陰で売上が上がったのは確かに良かったのだが、しかしその裏にはクラウドが賭かっているのである。そんな訳だからクラウドは、活気付くS-CLUBの中で一人、次回のミーティングにビクビクするハメになった。
とはいえ、そうして自分をキッカケに皆が一つになるということは、ちょっぴり幸せなような気がする。
いつだったか振られてしまった彼女には必要とされなかった自分だけど、此処ではそうじゃない。それがちょっとだけクラウドに勇気を与えた。
とはいえ――――――――…
「…どうなっちゃうんだろう、俺…??」
やっぱりちょっぴり自分のその後が心配なのだった。
因みに修行の日、セフィロスはこっそりクラウドにこう言っていた。
「今月も俺が必ずトップを貰う。必ず、だ。それまで、待っていろ」
と。
恐ろしくて待てません!、そうクラウドが心の中で思った事は、誰も知らない。
それでも皆、「クラウド」の価値については存分に承知していた。
END
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