∈「S−CLUB」∋
⇒何処かでずっと待ってるから
「あのー…すみません」
戸惑ったような店員の声に、すっかり安心していたクラウドは首を捻る。まさか、昨日の今日では解約できないということなのだろうか。そんな危惧をしていたクラウドだったが、店員の女性が口にした言葉は、その危惧よりももっと恐ろしいものだった。
何故って。
「あの、開通してないんですけど」
「は?」
意味が分からなくてそう聞き返したクラウドに、店員は更に困ったふうにこう説明する。
「この携帯番号、開通してないですよ。使われてないんです」
「え……」
「それにこの契約書ですけど、こちらに控えが無いんです。確かにウチの印があるんですけど、契約した痕跡が無いんですよね」
「!!!!」
とどめを差すように店員が言ったのは、こんな言葉である。何か変だなって思ったんですよ、などと言いながら放ったその言葉は…。
「それに、あの…。この機種ですけど、ウチ、まだ入荷してないはずなんですよね…」
―――――――――5人の背筋に、つうっと冷や汗が落ちたのは言うまでも無かった…。
その後、その携帯は最悪なことにお持ち帰りとなった。
何しろ控えもないし何も無いのだから、引き取る事もできないと言うのだ。だから仕方なく持って返ってきたのだが、更にこの携帯、奇妙なことに忽然と姿を消したのである。
それ以来、恐くて恐くて仕方なかったが、皆はそれをわざと忘れようと仕事に励む日々を続けた。
しかし、忘れることなかれ。
その携帯の向こうの何者かは、どこかで、ずっと待っているのだ―――――――クラウドからの返信を…。
それは、平和なS‐CLUBに起こった、一つの事件であった。
END
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